BABYMETAL - メタルレジスタンス - アルバムレビュー
autographvirus著2014年にデビューアルバムでワールドワイドな成功をおさめて以降、BABYMETALは非常に待望されていた続くアルバム「メタルレジスタンス」を世界へと解放する。バンドの帰還に多くの者が乗る中、2016年はついにBABYMETALがその価値と見掛け倒しのギミックでない事を証明する機会を得る事になる。
BABYMETALはおふざけをしにきたのではないという事がただちに明確となる。オープニングで召集をかけるRoad Of Resistanceはそのバンドが行き当たりばったりのJ-POPを加えたメタルというスタイルから、スムーズにヘヴィーメタル発電所へとうまく変化した事が見てとれる。メタルレジスタンスで、バンドを特徴づけるサウンドから離れたとみなす事は出来ないが、そのグループの力学は更に伝統的な姿へと調子を和らげており、主にサビで努めていた前作と異なり、SU-METALは多くのパートでボーカルを支配している。しかしながら彼女だけがこのショーのスターであるという事ではなく、3人全てのボーカリストがレコードを通して密度を高めている(想像されるとおり…彼女たちはシンガーだ)。ボーカル面では、相互作用に焦点を合わせていた前作から大きく変化し、女の子たちの実際の声の強さに焦点を合わせている事が、ここ何年かで私が最も満足した非常にキャッチーなメタルを作り上げる事に結実している。今度はシンフォニックメタルバンドから要素を借り入れらてきており、結果としてより手が届きやすくカオス 度を薄めたレコードになった。
しかしながら音楽面では女の子たちのバックバンドがGimme ChocolateやHeadbangerといった曲で見られた攻撃性をキープしており新作でも提示してくる。DragonforceやIced Earth*1といったスピードメタルバンドに傾向しながらも、より特徴を減らし、西洋化したヘヴィーメタルへのアプローチを取るというプレッシャーに迎合する事をバンドが拒んでいる事は清々しい。今回音楽的にはよりストレートになっているが、躊躇や自制をする意味合いでは決してない。リフとワイルドなソロは猛スピードで飛び回り続け、容赦のないベースドラムセクションとトレモロギターが、止まる事のない「メタル」体験を保証する。
Amoreで聴かれる束の間のベースソロ、Yavaのほとんどスカを思い起こさせるスティックとリフ捌き、そしてほぼテクノなAphex*2風のAwadama Feverのイントロといった要素はBABYMETALはサウンドを洗練させながらも、このグループを棚分けできないという二つの事実を証明するものだ。パイレーツの影響を受けたよりスローで燃焼するMeta Taro。そして キャリアを通して初となる英語によって歌われた作品The Oneは、感謝の念と感傷からなる喜ばしくも古風な長き冒険であり、世界が誇る最大級のアリーナで演奏される事を願わせる。
もしBABYMETALに投げかけられる批判があるならば、大半の曲が長くなる傾向にあるという事だ。ほとんどが4分から5分で、1、2曲は6分を超えるものもあり、全部で12曲もあるため疲れを覚えかねない。しかしながら、その可能性もはらんではいるが、このバンドのファンはそれを大きなボーナスと捉えるであろうから、それを問題であると断言する事も難しい。From Dusk Til Dawnといった曲は不必要だという論争の種にもなりえる。ほぼ4分間、相対的にこれといった事が起こらない雰囲気が続くままだからだ。
2014年にBABYMETALにWembley Arenaでソールドアウトライブのヘッドライナーとなる程まで居続けられる力があるかと言われたなら信じられなかっただろう。いや、2枚目のアルバムまで至らないとも疑っていたかもしれない。しかしながらそのどちらも間違っていたと伝えられる事を喜ばしく思う。メタルレジスタンスは多彩で、個性的、そしてデビューアルバム同様に紛れもなく優れている。重厚長大な曲の増加や、自分が日本語を喋れないという点に関係なく、殆どの生粋のメタルヘッドの時間を費すに値するレコードをこのバンドは完成させた。真のヘヴィーメタルクラシックがそのレコードを通して敷き詰められていて、単調になる瞬間は全くない。BABYMETALは消えず残り続けるそして私自身がその事を非常に嬉しく感じている。流行として登場し、逸材として残る。
8.5/10
訳者注釈:
*1 Iced Earth
アメリカのパワーメタル要素の強いメタルバンド。
*2 Aphex
Aphex Twinのこと。
テクノの範疇にとどまりきらない音楽性で、クラブミュージック、現代音楽、ロック等、ジャンルを超えた影響を与え続けるアーティスト。ここでは90年代後期にAphex Twinが取り入れたよりチョッピーなDrum&Bass的ビートの事を指しているものと思われる。
ちなみに「ドリルンベース」とも呼ばれるが、そのようなジャンルやスタイルはなく、日本のメディアによる造語であり、国外では一切使われていない。Breakcoreというジャンルが近い。
ソース: TALES FROM THE PIT
「流行として登場し、逸材として残る」
返信削除この一文いいですね
いい。すごいいい言葉。
削除同感
削除カッコいい表現を思いつくもんだなぁ
秀逸
削除今まで海外サイトからの2ndアルバムレビューを色々読んできたけれど、論評する人のバックボーンの違いでこうも変わるかというぐらいに違いがあって面白いね。
返信削除既にBMファンの人たちならどんな論評も問題ないけど、新規の人でこれからBMを聞いてみようと思ってる人だと迷っちゃう人も出るだろうね。
BMファンからすると、この人の評価は褒めすぎだろうと言いたいくらいの感じで
とても気分がいいね。
「流行として登場し、逸材として残る」
返信削除って素敵な言い回しだなぁって書きこもうと思ったら
すでに書かれてた。
俺も書こうとしたら、1番目のコメに書かれてた。
削除名言・名訳だなぁ。
「流行として登場し、逸材として残る」
返信削除あまりにかっこよく、心にメモした
原文はどんなだろ?と手繰っていくと
Come for the novelty, stay for the talent.
名訳じゃまいか
パイレーツはカリブの海賊でしょ?バイキングじゃないの?
返信削除パイレーツメタルというジャンルもありまして、原文もPirateなのでそのままにしています。
削除https://youtu.be/N6ehVX2LXBQ
痛烈に批判しているレビューは無いのでしょうか?
返信削除最近、BABYMETAL翻訳様のレビューを読んでいると、逆に怖くなります。
メタル界隈だけの話題でも、この先が想像つきません。www
飴だけでは、糖尿病になっちゃいます。
メタルレジスタンスに関しては批判的なレビューが本当に見当たらないです。
削除否定的なものでも訳すつもりではいるのですが。
返信有難うございます。
削除メタルエリートの方々も2ndアルバム発売後は難しい決断を強いられるのですね。
>西洋化したヘヴィーメタルへのアプローチを取るという
返信削除>プレッシャーに迎合する事をバンドが拒んでいる事は清々しい。
ここ肝かもね。3姫のメタルじゃなくね感と融和する
バックもどっか歪んでる、解ってて絶妙に歪ませてくる。
名画を元ネタにしたトリックアートみたいにメタルヘッズを錯乱させる。
BABYMETALの仕事は論理的には画期でRock/Metalの停滞を打ち破る理論だったから、評価は当たり前。
返信削除2年前にそう思った。
でもソニスフィアを前に文化的、人種的、言語的障壁の3重苦が眼前に重苦しく垂れ込め、3人の決意の表情と渾身のパフォーマンスは、それが未成年の少女たちであることから不条理感すら漂わせていた。
なぜ少女なんだ?
なぜ少女をむくつけきメタラーの満ち溢れた戦場に送り込む?
日本人の男子として申し訳無ささえ漂うそのステージで、3人は勝利したんだ。
気分はいいが、未だに不条理感は拭えない。
バックステージで疲労でしゃがみ込む由結か最愛の背中が忘れられない。
3人にはありがとうという感謝の言葉しかない。
おじさんたちが情けなくて、ごめん。
YAVAのスカ要素についてはっきり言及したレビューって初めてな気がする
返信削除そうだよね
削除自分もライブで初めて聞いた時はパワー・スカと呼びたくなる印象を持ったんだけど、どのレビューにもスカのスの字もなくて「ひょっとしてアレンジが大幅に変わった?」とか思ってた
あの雰囲気は好きだからちょっと安心したよw
個人的には、ジャンルとかどうでもよくて、満足させてくれる重低音があればいいんですよね。だからといってゴリゴリ・メタルは勘弁、単調だから。
返信削除BM曲には融合とかなんとか・・・以上のものがあるからより惹きつけられる。音楽的に非常に贅沢。
ROR,AWA,KARATEだけしか知らないが、それらを音楽的にマイナス評価するのは流石に不可能でしょう。
※なぜ少女をむくつけきメタラーの満ち溢れた戦場に送り込む?
返信削除無垢な少女パワーは無敵なのですよ。メタラーには対抗手段がまったく無い。腰砕けになるだけ。それにバックには神バンドと優秀な楽曲製作陣がいる。これでダメ押し、隙が無い。
こんにちは、いつも興味のツボを突いた記事選択と筆者の意図を深く明瞭に伝えてくださる素晴らしい訳文をありがとうございます
返信削除「流行として登場し、逸材として残る」
原文も良いし訳文も的確だと思うのですが、私には
「伝説となって残る」ような気がしてなりません