2016年3月21日月曜日

【KillYourStereo】メタルレジスタンスレビュー

オーストラリアのパンク、メタル、ハードコア、ロック、インディーを取り上げるサイトによるレビュー。長文です。

ALEX SIEVERS著
75 / 100

レビュー

過去数年、日本のBABYMETALは馬鹿げたほどに幅広いメタル系列に受け入れるべきか、「メタル」と考えて良いのかという古くから続く討論を引き起こした。彼女達のニューアルバム「メタルレジスタンス」でも、それは変わる事はない。なぜか?
そのコミュニティの一部、自身を「リアル」メタルヘッズと呼称する人々は、音楽業界についてや、メディアが特定のバンドに焦点を合わせ過ぎるが故に、小規模でローカルなメタルバンドが必要とする注目やサポートを失っていると常に文句を言っているからだ。
まあ、このライターは彼らに対して、なぜそれほどの注目を得ているのか教える事ができる。パダワンに身を寄せるのだ。彼が教えてくれるだろう…

なぜならBABYMETAL全体が奇妙さと風変わりさそのものであり、更に重要な事に、実際にそれを聴く事が非常に面白いからだ!

ああ、いいね。君はWhitechapel*1とThy Art Is Murder*2に影響を受けたローカルなデスコアバンドのメンバーなんだな。クールなんじゃないかな。ごめん、えっとなに?君はインストジャズフュージョンプログレバンドでギターを弾いてて、フェドラハット*3に熱い情熱を持ってるの?えーっと、そういうもんは最近はあんまり流行ってないよな。待ってくれよ…スピード/パワーメタル版Periphery*4みたいな音してて、Specner Sotelo*5の代わりに三人の日本人の女の子(全員が芸名に「METAL」をつけてて、滑稽なダンスの振付が付いてる)が力強く壮大なフックとメロディーを歌ってて、信じられないほど才能のあるバックバンドがNuclear Blast*6やMetal Blade Records*7所属のバンドみんなやるような強烈に難解なメタルをぶちかますバンドを君がやってるの?
そんで、そのバンドが「狐の神」とかなんとかってやつの預言者っていうバンドの物語まで作られてるって???おい。俺らも混ぜてくれよ!今すぐだよ!

Jemey Jasta*8がいつもPodcastで言ってる事だ — 良いルックスと面白い物語性が必要だってね。BABYMETALはそれらに関して完璧ではないが、その外観と物語性という部分両方で非常に多くの事が巻き起こしている。

しかし、ちょっとここに至るまで先を急ぎ過ぎたかもしれない。
君がなぜだかこのバンドの事を今まで知らなかった場合の為に説明しよう。彼女達の音とはキャッチーなJ-POPがパワー&スピードメタルの一番良い部分全てと融合したもので、おまけにいくらかのシンセまで上に散りばめられている。音楽的にはギターのリフとチャグ*9はどちらもヘヴィーで速く、数え切れない程多くの他のメタルバンドみたくリードとソロは壮大で煌びやか、グロウルとスクリームはブルータル、ドラムは極めてタイト、そしてプロダクションとミックスは他の著名なロック /メタル音源と同じく磨かれてる。ふん、そりゃメタルバンドのように聴こえるはずだ。

地理的な位置付けと、それらのジャンルのハイブリッド手法が、彼女達を非常に興味深い存在にしていて、現行の他のバンド以上の注目を獲得させている。Slipknot、Ghost、The Dillinger Escape Plan(ステージでの狂った存在感、ハードコアのワイルドなイメージのせいだとしても)、そして常に議論を呼ぶGorgoroth*10だけは例外だが。Crossfaithが急速にあれ程ビッグになったのも同じ理由だ。愛すべき日本のバンド、マキシマム・ザ・ホルモンがアジアの国々であれほどにビッグで居続けているのも同じ理由だ — 彼らは典型的なバンドとは違う。

そうだな。あらゆる悪い意味でもってドナルド・トランプが興味深く、注目を獲得しているって事について議論する事も可能だ。(彼も典型的な大統領候補ではない)しかしそういった目を引く要素があるなしに関わらず、彼らや彼女達は優れたアルバムをその手に掴んでいる。

「メタルレジスタンス」は爆発に次ぐ爆発を君に与える。オープニングアンセム「Road Of Resistance」から壮大な「From Dusk Till Dawn」そしてダークで力強い「GJ!」と、このアルバムはバンドの増大していく自信に満ちているだけでなく、非常に首尾一貫していて、デビュー作の先をいくものだ。しかしながらピアノバラード「No Rain, No Raibow」に到達すると、あやうさを見せはじめる。非常に人工的な曲で、なかなかにありきたり(ああ。他と比べてもさらに)だ。そして 「Tales of Destinies」は先に登場する「KARATE」と「Road Of Resistance」に似通っているが、それらの曲ほどの良さはなく、不必要に感じられる。そしてこのバンドの曲は母語の方がより機能しているため、英語バージョンの「The One」を多少にぶらせている。

よし。本音で語る時間だ。

BABYMETALはかなり馬鹿馬鹿しくギミッキーなバンドで、ぶっちゃければ、彼女達の音楽は誰の口にでも合うもんじゃない。ポップスファンにとってはヘヴィー過ぎ(西洋、東洋どちらにおいても)、「真の」メタルヘッズにはポップ過ぎる。しかしこの音には膨大な観客とマーケットがあり、前述したように、彼女達のコスチュームやマスクや踊りを取り払ってみても、非常に優れたレコードを携えたかなりクールなバンドである事に違いはない。

結論

最近行ったKillswitch Engage*11のJoel Stroetzelのインタビューで、彼は「ラウドでエネルギッシュでアグレッシブ」ならメタルと考えられると述べていた。その論理において、BABYMETALは間違いなくメタルである為の条件を素晴らしく備えている事になる。そして衝撃的な事に、多くのメタルバンドと同様、彼女達にもそのジャンルだけに限定しない音楽の要素がある。最後まで聞いてくれ。このアルバムが終盤で行き詰まる一方、「メタルレジスタンス」には非常に優れた曲が幾つかある。必ず一度は聴いてみるべきだ。もしくは二度、ないしは永遠に現代の時代精神に無知で無教養な野郎でいるかだ。そう。このバンドを聴く事を変に思う事なんてない。マジでメタルエリート主義者達や後ろめたさなんてクソ食らえ — 純粋に好きなものを楽しむだけでいい。そんなクソに構ってられないくらい人生は短い。

それに…こいつらはLadyBabyには勝っちゃいない。


訳者注釈:
*1 Whitechapel

アメリカのデスコアバンド。

*2 Thy Art Is Murder

オーストラリアのデスコアバンド。

*3 フェドラハット

トラディショナルかつテクニカルなギタリストが好んで着用する帽子。

*4 Periphery

アメリカのジェント / プログレッシブメタルバンド。
BABYMETALのライブ会場でもかけられている。

*5 Specner Sotelo
Peripheryのボーカリスト

*6 Nuclear Blast

ドイツのメタルレーベル。
創設者の故郷に設立されたレーベルが、田舎町の基幹産業となっている様をとりあげた「ヘヴィメタル・イン・ザ・カントリー」というドキュメンタリー映画も制作された。
ちなみに日本で配給・提供したのはアミューズソフトエンタテインメント(現在はアミューズに吸収合併されている)。

*7 Metal Blade Records
アメリカのメタルレーベル。

*8 Jemey Jasta

Hatebreed、Kingdom of Sorrow等、数多くのバンドに参加するボーカリスト。

*9 チャグ

ブリッジミュートをきかせた低音弦でリズミカルな刻みを弾く事。その際、基本的には旋律を動かさず、同じ音階やコードを刻みつづける。

*10 Gorgoroth

ノルウェーのブラックメタルバンド。
悪魔崇拝者である事を公言、メンバーがそれぞれに暴行や強姦で収監される、上の動画でのライブの演出が宗教的冒涜行為であるとしてポーランドで裁判にかけられそうになる等、あくまでもイメージとして恐ろしさを演出していた他のメタルと一線を画するブラックメタルの在り方の代表として知られる。

*11 Killswitch Engage

アメリカのメタルコアバンド。
メタルコアというジャンルのパイオニアの一つに数えられる。

ソース: Kill Your Stereo

23 件のコメント:

  1. 翻訳ありがとうございます。これも誉めてんのかね。ここまでくると器が小さいというか、音楽を理屈でしか受け入れない
    ただただめんどくさい連中にしか見えません
    今更まだ受け入れる受け入れないなんてどうでもいいし遅いよ。さっさと曲のレビューしろと呆れますね

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  2. >「メタルレジスタンス」は〜までのイントロ長いッスね笑
    こういった感じ、ソニスフィアの頃によく見かけた気がします。ホルモンは前振り無く「愛すべき」としているのに、やはり相当な葛藤が生じるのでしょう笑。
    長文で難解そうな翻訳ありがとうございます!

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  3. ノーレインに対して恐れていた通り入れて欲しくなかった

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  4. いつも翻訳ありがとうございます!

    前の方のおっしゃる通りかもしれませんね。
    音楽なんて「楽しんだもん勝ち」みたいなもんだから、聴いてみて好きじゃなければそれでいっこうに構わないわけで。
    地理がどうとか、トランプがどうとか、専門家でもないのにそんな分析されてもねぇって感じ。
    「くどくど御託はいいから、さっさとそれぞれの曲をどう感じたか書けよ!」って思ってしまった笑

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  6. メタルを評論する奴ってめんどくせーな!
    具体的に簡潔に書けんのかね。
    女に嫌われるタイプが多いね、ぷぷぷぷ!

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  7. ノーレインを褒めてるレビューもあるのに1つのレビュー見ただけで恐れていた通りとか笑かすなよ。自分はLedaが関わってるのがわかって興味わいた。

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  8. なんか周りをグルグルと回っていて、いつまでたっても中心部に切り込むことをしない評論だ。
    まぁ仕方ないかな。ある意味、メタル原理主義者にとっては、BMは黒船みたいなものだろうから。いまだ右往左往しているというところかな。
    BMは、メタル界の新時代を切り開く意識改革みたいなところがあると思います。

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  9. 葛藤してるけど認めるみたいな評論ですかね
    まぁノーレインのくだりは同じ気持ちですね
    個人的にあの曲はセカンドには合わない気がしてた

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  10. >虚空蔵菩薩 様
    同意です。

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    1. このコメントは投稿者によって削除されました。

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  11. 内容はともかく記事にしてもらえるだけ有り難い事だ

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  12. ノーレインなんかベビメタじゃなければ聴きたいとも思わない曲だろうな
    ベビメタらしさも無いし単なるありふれた歌謡曲みたいなのに他の変な曲に混ざっても何となく成立してしまうのが面白い
    ベビメタの世界観じゃないものを取り入れてもベビメタ色に染めてしまうくらいの力があるうちは大丈夫
    まあその辺の受け止め方は個人の判断だけどね
    すぅが歌うなら何でも良いなんて言うファンも居るだろうし
    ファン同士だって同じベビメタを見ている訳じゃない

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  13. いやそんな簡単な話じゃない。
    ただ感じろというだけでは済まされない破壊的なコラボレーションだからこそ、難解に見える議論が必要になってくることだってある。
    それは理屈の上の解析が成就された時こそBABYMETALが真に受け入れられる、オピニオンとして発言権を持つ、という欧米思想の土壌があるからだ。
    日本には思想史的な音楽の流れはなにもない。
    だから歌謡曲もJPOPもただヒットソングとしての消費財として使い捨てられ忘れ去られ、ただ個人の思い出とリンクした懐メロとしてカラオケで歌われ、最終的には懐古番組のBGMで流されて記憶喚起の道具と成り果てる。
    BABYMETALは違う。
    JPOPを触媒として西洋音楽の進歩と分岐を見事に再構成させ、過去の遺産を未来への遺産として再生することに成功しているからこそ評価されるのだ。
    それを右往左往と舐めてかかるのはBABYMETALの楽曲の意味合いを軽んじるのと同じことなのであり、未だ消費財としてヒットソングのひとつとしてしか認識出来ないことの表明でもある。
    価値のあるものは語られるべきであり、言葉のイディオムと音楽理論は同等のものであることを早く認識しないと、いつまでたっても日本は置いてきぼりにされるのであり、BABYMETALはひたすら日本の音楽界とは関係のない達成として無視されるであろうことを。
    BABYMETALを母国に評価されないバンドにメイト自らが追いやる、それくらい日本人として寂しいものはない。
    失礼な物言いをすれば、お主らベビメタが欧米に評価されて嬉しい?
    アホか坂本九の大昔からそれだけだろうが!
    男だったら感じてないでBABYMETALの価値を徹底的に語れやクソが!
    絶対的な評価軸を国内にまず確立しろや糞メディアが!
    メタル的にはそう思えてならない。

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  14. まずベビメタをメタル系の媒体で評す場合自分はベビメタをはどう見ているかを読んでいるであろうメタラーに説明しなければならない(メタルへの愛ゆえに)。この工程はメタルファン以外が読むとコメ欄にもあるようにただただめんどくさい連中にしか見えませんだとかメタルを評論する奴ってめんどくせーな!簡潔に書け!考えるな感じろ的な暴論になりがちになる。
    メタルにはいろんな枝葉があり文脈、価値観、築いてきた歴史がある。それを語るのがメタルメディアのあり方でもある。
    それをそんなこと知らねーよ!めんどくせー奴と言うのはメタルを理解してないベビメタファンの押し付けでしかない。
    双方リスペクトは忘れないでほしいと思う。

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  15. >彼女達のコスチュームやマスクや踊りを取り払ってみても、非常に優れたレコードを携えたかなりクールなバンドである事に違いはない。

    でもダメだよ!そこを取り払っちゃダメなんだ!
    西洋のメタル畑の評論家、さらにはベビメタのファンにさえいえることだが
    彼らはダンスや衣装なんかの要素を非常に過小評価してる。
    というか理解できていないとさえ言っていい。

    もちろんそこで言いたいことは分かる。でも例えば「ギターを取り払っても」なんて仮定が成り立つと思うか?それを取り払ったらベビメタはベビメタじゃなくなっちゃうんだよ!

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    1. その通りですね。これらの要素をただのギミックと見ているならば、ベビメタのことをしっかり理解できてるとはいえないと思います。
      特にダンスは、歌や演奏と並ぶベビメタの核の部分です。
      にも関わらず、あまりにも語られることが少なすぎると思います。(まぁアルバムのレビューでは語りようがないですが)

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  16. こちらは以前までのレビュワーとは逆で、アルバムの前半から中盤までを評価しているのですね。
    海外の評価といっても人それぞれだし、あんま評価気にしてあーだこーだ言っても仕方ないですね。
    結局は自分の耳で聞いて判断しないと。

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  17. 最後の文の意味、逆な気がします。
    Still… these guys have got nothing on LadyBaby.
    「それでも、こいつらは、LadyBabyに勝るところは何もない。」
    結局ディスってる記事かも。

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    1. その通りですね。明らかに誤訳です。
      記事を修正させていただきました。ご指摘ありがとうございます。

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    2. ladybabyに勝るとこがないって、オーストラリア流のジョークなのかな?
      本気で言ってるなら音楽論評するのやめたほうが良いレベルだなw

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  18. 「メタル好き」って結局「メタル好き」でしかないのかね。
    ここのメタル好きの話を読んでいると「メタルが好き」だからといって、別に「音楽が好き」なわけではないのかと思ってしまう。
    軸になるべきは、「自分が良いと思うかどうか」だと思う。
    音楽理論云々言っている人いるが、音楽理論(評論じゃないよ)はあくまでも後付けだからね。
    それが先にきてしまうと、最終的にジョンケージみたいになってしまうよ。

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    1. >「メタル好き」って結局「メタル好き」でしかない

      これは乱暴な決めつけですよ。
      現実に、メタラーでベビメタを応援している人間もたくさんいます。海外の強力なベビメタファンはメタラーでしょう。

      メタルという音楽に何を求めているかで変わってくるのだと思います。
      メタルという方法論で紡がれる音楽そのものを好きなのか、メタルという音楽で語られるマッチョさや狂気・破壊・反抗などを好むのか…。
      どっちも間違いではないと思います。
      後者であるなら、その世界観を満たさないベビメタは確かに魅力的ではないはず。
      音楽理論ありきで好きになったり嫌いになったりしているわけではなくて、「良いか悪いか」という判断がまずあって、嫌だ(良い)という判断を正当化するために、いろいろグダグダ言うんでしょう。西洋人は分析するのが好きな傾向がありますから、特にそうだと思いますよ。

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