2016年3月26日土曜日

【MetalSucks】喰らえヘイター共 - BABYMETALのメタルレジスタンスは最高だ

レビュー: 喰らえヘイター共 — BABYMETALのメタルレジスタンスは最高だ

4.5 / 5
JEFF TREPPEL著

地下室に居住する*1真のメタル戦士達が髪を洗う事以上に憎むものとはポップスだ。あからさまな商業的野望と一般に向けたアピールとは、メタルのアウトサイダー哲学と直接的に対立するものだ。裏切りのかすかな匂いでさえ取り乱させる — Watain*2(商業的ラジオで絶対にかかる事がないバンド)が最新アルバムにクリーンボーカルを含めた事へのネット上に満ちた苦悶の泣き叫びを見てみるがいい。
それがBABYMETALへの過激な反応のルーツだ(メタルシーンに潜む性差別主義や人種差別主義以外では)。彼女達はPerfumeやMomoiro Clover Zを産んだ日本のアイドル産業複合体による製品である: 信じられない程に才能のあるスタジオミュージシャン、作曲家、そしてプロデューサー達が完璧に製作する精選された甘いジングルをKawaii 姿でパフォーマンスする。これは何も新しい事ではない; 十代の女の子達が音楽の売り子として使われる事はレコーディングが存在する以前からあったものだ(そしてこの議題については疑いなく十分にジャーナリストによって論じられてきている)。R&BやElectronicaやその他のものではなくメタルがその基盤に使われた事が初めてだったというだけであり、その事がメタルヘッズ達を怒り狂わせた。

それは全て観点の問題だ。メタルアルバムとして見れば、メタルレジスタンスは明らかに
過去偽られた中で最も偽り度の高い虚偽による偽造品だ。ポップスレコードとしてはOne DirectionやBeyonceや今人気のある誰かのファンより、90年代メタル愛好家達*3に受け入れられるものだ。セルフタイトルアルバムでのデビューから2年と少し — フェスティバル出演やLady Gagaのオープニングを務めた後にスタジオへとその女の子達を詰め込むには、現実的には可能な限りで最も早かった — BABYMETALのセカンドアルバムは明らかに機能した方程式をやりつづけている。その方程式を成立させるものとは、フックとフックそして更なるフックである。

バンドの裏にいる顔のみえない作家集団(文字通り彼らの顔は狐の面によって隠されている)を考慮すれば、セルフタイトルデビューアルバム用に非の打ち所のないシングルを作り上げるために5年を費やせた。— もしそれ以上でないなら少なくとも —同じ強度のある楽曲群を半分以下の時間で作り上げた事に感銘を受ける。

GagaやKe$ha*4による正統なアメリカのポップアルバムを例にとれば、それらは5曲目あたりから貧弱になっていくのがお決まりだ。メタルレジスタンスは通して勢いを保ち続ける。それはその多彩さによるところが大きい。いかにBABYMETALがそれぞれに異なる要素を各曲で見せているかが鍵なのだ。「KARATE」や「Sis. Anger」といったメタル的爆発に加えて「From Dusk till Dawn」ではTrip Hopまで組み込み、非常にEluveitie*5 的な「Meta Taro」でハーディーガーディー*6を鳴らし、ちょっとしたスカまで「YAVA!」には加えている。広報時においては作曲クレジットは明らかになっていないが、「Awadama Fever」はMad Capsule Marketsのデジタルハードコア*7のように聞こえ、ほぼ間違いなくデビュー盤で「GIMME CHOCOLATE!」を手がけた上田剛士が作曲したものだ。

アルバム最後に3つの大いなる別れがある。「No Rain, No Rainbow」はSUIMETALが
全身全霊で歌う初のパワーバラードでBrian Mayがアニメ化したようなギターソロで幕を閉じる。「Tales of the Destinies」はスタジオミュージシャン達が輝く機会を与えており、Dream Theaterを赤面させかねない演奏という魔法が繰り広げられるプログレッシブメタルだ。そして最後に「THE ONE」はアメリカ盤のボーナストラックとして収録されており、女の子達は初めて完全に英語のみで歌っており、その壮大なプロダクション(同時にメタル要素を欠いている)と相まり、明らかにアメリカ市場でのブレイクを狙ったものだ。これらはおそらくこのグループの先行きを示す最大の手がかりである: SU-METALをソロのキャリアへと送り出し、BABYMETALをより複雑な方向へとプッシュし、アメリカを征服しようとしている。

それらが結実するかは様子を見てみよう。メタルレジスタンスはBABYMETALのデビューがただの流行性ではなかったという事を証明した。セカンドアルバムの呪いをめざましく乗り越えたのだ。それを君がどのジャンルだと捉えようとも。


訳者注釈:
*1 地下室に居住する
親元を離れない人間がきまって住む場所であるため、ひきこもりやオタクを揶揄する意味で使われている。

*2 Watain

スウェーデンのブラックメタルバンド。
引用した楽曲でもみれられる遅いテンポの導入や後半のクリーンボーカルが議論を呼んだ。

*3 90年代メタル愛好家達

原文は"hesher"というメタルファンの中でも、特に昔のバンドだけを愛でつづけている層を指す言葉。揶揄的に使われる事が多いスラング。

*4 Ke$ha

アメリカのポップスシンガー。
日本での認知度は比較的低いが本国で圧倒的な人気を獲得している。

*5 Eluveitie

スイスの民族楽器をフィーチャーしたフォークメタルバンド。

*6 ハーディーガーディー

ハンドルを回す事で弦を響かせる弦楽器。ヨーロッパの民族音楽や現代音楽で広く使われる。

*7 デジタルハードコア

90年代にAtari Teenage RiotのAlec Empireによって提唱されたオランダ発祥のガバやスピードコア、イギリス発祥のジャングル、そしてハードコアパンクの要素を融合させたジャンル。
日本ではMad Capsule Marketsやサイケアウツに多大なる影響を与えたがジャンルとしては短期間でほぼ消滅した。Breakcoreというジャンルにその潮流が残っている。

ソース: Metal Sucks

29 件のコメント:

  1. まだ音源を聞いてないのに、あちこちでレビュー見る限り良い事はわかる 
    MetalSucksの最後で「セカンドアルバムの呪い」て言葉、重いですね
    今までのBANDがこの言葉で潰れていったのをみてるし。
    早くっ聞きたい DEATH

    返信削除
  2. レビュータイトルの雑さw
    ヘイター煽って読ませるためなのかな

    返信削除
  3. バンドとしての立ち位置を確立させる意味では今回の2NDの構成
    は理解できるが、ファーストの楽しさ、キャッチーさが無くなった。
    ベビーメタルって楽しいってのがファンの拠り所だったはず、
    それが薄れていっているからjPOPファンは離れていくんだろうなー。
    戦いもいいけど・・どうなんだろうねー。
    評論家が褒めて売れたアルバムって意外に少ないからね。

    返信削除
    返信
    1. 完全に同意。
      絶賛してるのはメタル界隈からの意見が多いしね。
      ただ、「世界征服」の為には、まず「メタル界の救世主」にならないといけないという事なのかもな

      削除
    2. 同じことを二度もやるのかい?
      音楽的には面白くないな。

      削除
  4. しかし絶賛ばっかですね
    アメリカでブレイクするといいなぁ

    返信削除
  5. 他人の書いたレビューで実際に聞いた気になって論評しちゃう人もいるんだな。

    返信削除
    返信
    1. もう聞いたから書いてるんだ。
      具体的には暗黙のルール上書かないけど。
      海外の音楽業界とつながりがある人間もいる事を
      分かってちょーだい。

      削除
    2. ※個人の感想です。

      削除
    3. ソースも考えずに当たり構わずDISるなよ。
      子供じゃねーんだから。

      削除
    4. もう聴いたから書いてる方は、公式にリリースされるまでそういう感想はオフレコにしておくのが普通では?
      わかってちょーだいとか甘えたことぬかすなって思いますよ

      削除
    5. そんなに海外と付き合いがある人は翻訳じゃなくて原文読むんじゃないのかね。

      削除
  6. ロックの場合、評価の高い盤は長きに渡り売れ続ける。
    とりわけ、特定ジャンルの創始者の系列に属するグループの名盤は
    いつまでも売れ続ける。
    (これは雑誌や書籍などの媒体で歴史学的に取り上げられる機会が多い
    ことによる効果なのかもしれない)
    クラッシュやピストルズ、クラフトワークのレコードなんかがそれだね。
    呆れるほどのロングセラーといえる。
    kawaii metalの創始者のレコードもそうなって欲しい。

    返信削除
  7. 筆者の推測でしかないんだろうが、すぅちゃんのソロキャリアの話しがいよいよ出てしまう段階まで来たのか。今年もワールドツアーで大忙しだから、実現しても数年先だろうな。

    返信削除
    返信
    1. メタルサックスは、ベビメタ愛は確かにあるんですが、kawaiiメタルの継続のために、メンバーチェンジできるシステムの導入を訴えてるんですよね
      この3人だから成立している。特にすぅの歌は替えがきかないというのをいまいちわかってない点が、ホントにわかってんのか?とこっちに思わせてしまうメディア
      割りと初期からプッシュしてくれていた媒体なので、筋金入りなのは確かなんですが…。

      削除
    2. なるほど!
      メタルサックスが言ってるSU-METALソロってのはそういう意味なんですね。

      メンバー代えたらベビメタは終わる。
      外野が余計なこと言わないで欲しいなぁ。

      削除
  8. 上の方でPOP要素が減っていくことに不満を垂れている人がいるようだが、
    俺に言わせれば、今更何を言っているんだとしか思わんね。

    そうなっていくだろうことくらいソニスやRORの発表時でとっくに分かっていたことだろうに・・

    ドルオタを釣り上げる為のおふざけモードなんて糞食らえだ。
    良質なメタル楽曲と飛び切り最上級の可愛さがあればそれで最高さ!

    返信削除
    返信
    1. ドルヲタというか、ワンダイとかビーバーとか聞いてる海外のライト層にも刺さるような楽曲があってもよかったかなとは思う。
      全然違うけど、モトリーのドクターフィールグッドみたいな。とにかく楽しいアルバムがね。

      削除
    2. 言わんとする気持ちは分かるがワンダイとかビーバーって・・
      それがどんだけ無茶な要求をしているかって自分で意識ないのかな?

      神を含めた彼女ら7人がスーパーバンドであることに疑いの余地はないが、
      ガチメタルヘッドからワンダイまでって、いくら世界征服の野望を持っているのだとしてもそりゃいくらなんでも無理ですぜw

      しかもたった一枚のアルバムの中でそれを実現しろってか?w

      削除
    3. 私もそう思います。
      やたらと1st的なポップさを求めるんなら、「一生1stだけ聴いとけば?」と思いますね(おねだりや、よん〜なんてあの年代だから出来たんでしょう)

      小中学生の時のポップさを、大人になって行く彼女達がずーっと演って行くわけないじゃないですかね。

      KARATE、The Oneなんか聴けば、そう言うおふざけ方面から、ゆい&もあに奇麗に歌わせる方にシフトして行ってるのが判るでしょうに。
      それでもまだ十分、「なんじゃこりゃ!」成分残ってますしね。

      削除
    4. 個人的に、ベビメタの利点ってチームベビメタによる多彩な楽曲提供だと思ってるんですよね。
      普通のバンドだと、決まった人間が楽曲を作りますから、どこかでアイディアが枯渇してマンネリになってしまう。ベビメタはそれを避けることが出来るわけです。
      そして、ジャンルの壁をとりはずして自由に駆けるその自由さこそが、ベビメタらしさだと思っています
      だから、「1stのような」という縛りをつけるのは、せっかくの利点を殺す行為だと思っています。
      バランスとしてpopさも必要になれば、そういう路線の曲もまた出る出るでしょう。ただし、メンバーも年齢と経験を重ねますから、その時にできるその時なりの表現をしてくるはず。
      1stはそういうタイミングだから出来た曲。同じ事を今後にも求めるのは「ベビメタらしさ」にとってマイナスだと思います。
      ファンとしても、固定観念をベビメタに押しつけるのじゃなく、ベビメタの変化を面白がれる自分でいたいなと思いますね。盲目的に全てを礼賛するという意味じゃなくてね。
      長文失礼しました

      削除
    5. POPさが減ったみたいな事言ってんのはもう放っといてイイんじゃない?
      例えばもし今の時点でドキモをレコーディングしたら1stよりぜんぜんヘヴィーな音になると思うよ。

      削除
    6. コバメタルは良質の作品に固執していて、客層も絞ろうという意図が見える。別にどんな人にも聞かれる音楽は目指していないと思う。誰にでも聞かれる必要があるかどうかは製作者側の勝手。嫌なら聞かなければよいと思うよ。ちなみに音楽業界レビューができるような立場の人は100%こんなところには書き込みしない。

      削除
  9. 2ndは超楽しそうなアルバムだ(リークのお試し音源を聴く限りにおいては)
    バラエティに富んでる

    何を楽しいと感じるかは個人の主観による
    俺的には1stの1.5倍は好きになりそうだ

    返信削除
  10. ヘイターを煽るのはいつもながらのメタルサックス独特のスタイルですが、
    今回は記事内容はやけに真面目な論調ですね。(^_^)
    メタル系のメディアの評価は概ね良好ですが、曲目ごとの評価やアルバム全体の流れの評価では、記者によって評価が全く違ったりしているのが、非常に興味深いですね。
    早く自分の耳で直に確かめたい。

    返信削除
  11. Metal Sucksは本当にベビメタ好きだなぁと思ったら
    今回のreviewerはVINCE NEILSTEINでもAXL ROSENBERGでもないんだね
    あの二人は褒めすぎるから別の人がレビューしたのかな

    返信削除
  12. メタル系のメディアの評価が良いならグラミーもあながち夢物語ではない?
    そんな気がしてきた。

    返信削除
    返信
    1. グラミーは置いといてメタル系メディアにとってBABYMETALは本当の意味で救世主でしょ。もはや最後の砦であり未来でもある。

      削除
  13. いけない!イントロ5行ばかりリフレインしてしまいます笑。
    楽しい翻訳ありがとうございます!
    WOWOW見ました。
    KARATEがオンエアされなかったのは残念ですが、ふんわりパーマでおしゃれした藤岡氏が、TheOneで髪型とのアンサンブルを無視した超絶フレーズを奏でる姿に惚れ惚れしました。

    返信削除