2016年4月13日水曜日

【LTS】いかにBABYMETALがロックの様相を変えているか

チュチュ、お下げ髪、そして叫ぶギター: いかにBABYMETALがロックミュージックの様相を変えているか

Siobhan Harper著

ライブで見る最も奇妙な物とは何?モッシュピットで靴を無くした男?特に理由なくアナと雪の女王のアンナに扮した誰か?ゴシックなチュニックと明るい赤のチュチュを着た何人もの小さな女の子はどう?先週末、私はそれら全てを見た。コンサートでのBABYMETALを見るため、初めてWembleyに旅した時に。
その喜びをまだ知らない人にBABYMETALを説明すると、チョコレートを食べる事や学校に通う準備をする事についてのかわいい歌曲を、埋葬ローブを着たメタルバンドをバックに歌う日本人のポップストリオだ。バンドが楽器で激しく演奏する最中、彼女達は歌い踊り、過去聴いた中で最も不和な上に奇妙にもキャッチーなメタルを創り出す。
どんな説明もその姿を正しく描写する事はできない。だから自分自身で見てみるのがベストだ:
(メギツネMVへのリンク)

私が初めて彼女達を聴いたのは友人に「BABYMETALを聴いた?」と聞かれた時だった。
Kidz Bop*1風のイケてるキッズバンドがMetallicaの曲を水で薄めたようなものを歌っているものを思い描いた。最悪の事態への心の準備をしながら、そのビデオを見た。しかし最初の10秒を「んっ?」となりながら過ごした私は、直後にこれは今まで見たものの中で最高のものの一つだと決心していた。


西洋のポップスの世界においてBABYMETALの主題は新しい風だ。

メインシンガーのSU — METAL(中元すず香)、ダンサーであり「スクリーマーズ」のYUI — METAL(水野由結)とMOA — METAL(菊地最愛)からなるバンドには、音楽の世界の中でも最も奇妙な発祥の物語の一つがある。サブグループへと分かれるまで3人全員が元々伝統的なJ-POPグループさくら学院(Cherry Blossom Academy)のメンバーであり、彼女達は「heavy music group」へと配置された。それまではメタルを聴いた事がなかった事をオープンに認めながら、チュチュを着て、ファーストアルバムをレコーディングし、そして彼女達は世界中へと爆発的に広まった。

もちろん人工的なポップスが「彼らの」音楽に広がってきている事に怒っているメタル純粋主義者も多数いる。メタルのしかるべき鋳型に、大きな笑顔と元気な動きの女の子達はきっちりとはまりはしない。しかしながらその事こそが彼女達を非常に輝かしくしている。

Spotifyのトラックリストを聴いて、彼女達が炸裂させる明白な楽しさを各々に発見してみよう。昨今発売されたセカンドアルバム「メタルレジスタンス」からの「Awadama Fever」は、風船ガムで動くタイムマシンへの熱狂的抒情詩だ。「Doki Doki Morning」は逃れられなくキャッチーで、「Gimme Choco!」では自分が気づく前に立ち上がっている事だろう。それはただ楽しい。単純明快だ。
(ギミチョコMVへのリンク)

私がBABYMETALを好きな理由は、Zig and Zag*2が美化された靴下製の人形ではなく女たらしのポップスターとして売り出されて以来、最も奇妙な音楽のコンビネーションである事と同時に、彼女達が特に若い女の子に向けたポジティブなメッセージの曲をパフォーマンスしている事だ。「Ijime, Dame, Zettai」はイジメ反対のロックアンセム、「Megitsune」は「理想的な」女性像への攻撃、そして「Gimme Choco!」は若い女の子が細くいなくてはいけないと感じるプレッシャーを検討する。西洋のポップスの世界において、BABYMETALの主題は新しい風だ。

ハードコアなメタルヘッズ、まさに初めてのライブに興奮して来ている若い10代、そして両親と一緒に来た前述のチュチュでドレスアップした若い子供達、それら全員が観客だ。

彼女達のパフォーマンスを見るためにWembleyに居ると、彼女達の影響がどれほど遠くまで届いているかがわかる。ハードコアなメタルヘッズ、まさに初めてのライブに興奮して来ている若い10代、そして両親と一緒に来た前述のチュチュでドレスアップした若い子供達、それら全員が観客だ。女の子達がステージに現れた時、その観客は絶対的にワイルドになり、共に踊って叫ぶ事を最後の最後までやめることはなかった。BABYMETALの何かが、全員を私が見た中で最も礼儀正しく楽しいモッシュピットへと一つにしているのだ。

彼女達の音楽はあなた向きじゃない?それでも構わない。万人向けじゃない。けれども、BABYMETALはメタルの可能性を広げているだけではなく、彼女達はそれ蹴り倒し、そして魅力的なダンスを引き出している。自身の主張のために。彼女達のようなものがもっと欲しい。お願い。

※ところで、Twitterのおかげで靴は無くした彼に返す事ができたわ。なんて時代かしら。


訳者注釈:
*1 Kidz Bop

ポップスをキッズグループがカヴァーするコンピアルバム。
2001年以降毎年1〜4枚リリースされており、累計で1600万枚以上を売り上げている。

*2 Zig and Zag

アイルランドのテレビ番組「Dempsey's Den」に登場する人形のキャラクター。
複数枚のシングルと1枚のアルバムをリリース。
引用したErick Morilloがプロデュースしたシングルはイギリスで7位チャートイン。

ソース: LTS

15 件のコメント:

  1. 翻訳有難うございます

    FoxDay以降の盛り上がりを嬉しく感じています
    少し早すぎるのでは?という不安も少々
    また さくら学院というBABYMETALのルーツまでいろんなところで取り上げられ理解もされてきた気がします(これが気に入らない人もいますが)

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    1. 天才が駆け上がって行くという時というのは大概周囲の予想を超えるものですよ。
      凡人の予想を超えるからこその天才、そしてその才能は地道な努力によって支えられている。
      つまづく事も時にはあるでしょうが、それほど心配はしなくても大丈夫だと思います。

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  2. 早すぎるとは思いません。彼女たちは既に足掛け6年の活動歴があるのですから。
    臥薪嘗胆という言葉がありますが実社会の様々な制約と営業活動の狭間で彼女たちにしかわからない葛藤があり、それらとも戦わなくてはならなかった苦しみの量は今の栄光の何倍もあったことでしょう。そしてそれはまた尚現在進行形でもあるのです。

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    1. あなたの彼女たちへの思いは尊重します。
      しかし世間の常識からみればまだ6年です。
      Youtubeで話題になってからまだ2年。
      苦労話をしだすともっと大変な思いをしている人がほとんどだし、彼女たちはまだ周りのスタッフやファンに守られている方だと思います。

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    2. 先日のNHK特番でのSUの言葉
      「戦って初めて見えてくる景色がある」は本当に戦ってきた人間にしか言えない。まだ6年と言われる方がいますが、18歳、16歳の時点での6年間が如何に長いか、ご自身の人生を振り返り考えて戴きたい。
      まして、彼女らの人生はBMだけではなく、それ以前からの活動も含まれる。SUの之までの人生の大半は戦いだったのだ。
      更には、逆風となっている、日本国内の不条理な状況を現出させてしまった責任は我々大人にある。
      そんな物とも、BMは戦い続けて来た。
      確かに、我々はSUの2倍、3倍の長さ(私は3.5倍)の人生を経てきている。
      しかし、それでは、どれだけ戦ってきたか?どれだけ戦えたのか?
      戦いたくても戦えなかった?そんな言い訳に不甲斐なさを感じる。
      だから、SUの「戦って初めて見えてくる景色が有る」が胸に突き刺さる。
      「こんな人生を、こんな青春を送りたかった」と言う憧れと悔恨を感じるのは私だけだろうか?
      私も、早や過ぎるなどとは思いませんよ。

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    3. 言っていることがその他大勢のアイドルオタと変わらんな

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    6. 正直なところ、これを創り出した、アミューズは凄い。
      3人の内、良い意味での天賦の才は、SUだけど、YUIMOAも
      尋常な才能と努力ではないのこと明らか。こんな3人を
      巡り合わせて、尚、勤勉なる努力を惜しまず昇華させた
      のは、アミューズのKOBA氏がその筆頭だとしても、
      この会社の持てる潜在的な力量と志向性は、本当に卓抜
      してると言わざる得ないと思う。あのキャンディーズの解散
      から起こされた、この会社は、その40年近い様々な
      蓄積と志向が、BABYMETALを生んだ背景にあるんだろう。

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  3. いつも翻訳ありがとうございます。
    珍しく歌詞について多く言及した記事ですね。
    Su-METALがインタビューで語っていた「メタルサウンドにポジティブな歌詞を乗せる」ってことがメタルレジスタンスであり、ベビーメタルというジャンルだと思ってます。
    メッセージ性のある歌詞の曲が多いセカンドアルバムは、Su-METALの歌い手・表現者としての魅力をファーストアルバムの何倍も引き出してくれています。
    ビルボードTOP40入りを果たしてなお、まだまだこれからが楽しみなアーティストですよね。

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  4. 私はHR/HMを楽曲もミュージシャンもある程度知っていますが、音楽のジャンルとしてそれは隅の方に追いやられ若い人たちは聞いている曲がメタルであってもメタルとは思っていないでしょう、ベビーメタルによってメタルというジャンルを再発見する世代ができつつあるのではないかと思います。レディングフェスなどを見ていると何となくそんな気がしていました。
    今更メタルかよがメタルってカッコ良かったじゃんに神バンドを見てると思うのではないかと。
    火を吹かないコウモリ食わない、可愛いが十分観客を喜ばせる。
    キリスト教的地獄に憎らしい奴を叩き込んでやるという憎しみを歌わない、前向きな歌詞。
    荒んだキャラを演じない、コアラを抱くメタルミュージシャンはどうかと思いますが、それを許されるキャラ。
    なかなか凄いですね。

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  5. 「反キリストごっこのメタラーがガチの異教にマジびびってやんの」
    いつか適切な相手にぶつけてみたい言葉ですがそれはさておき。
    BABYMETALは楽しいがどうやらそれだけにとどまっていないようで。
    楽しいを触媒に「ジャンルに忠誠心を持っていがみあえ」という信仰からの脱洗脳をされることで楽しさの向こう側に達しているのではないかと。
    【 THAT'S NOT METAL】の二人はその域に達していないからウエンブリーを楽しめなかったのかもね。

    いや、「ジャンルにこだわるな」って方向に洗脳してるのか?それはそれでいいけど。

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  6. 昨日WOWOWでラウドロック観てたけど、メタルのヘビーなサウンドは好きだしかっこいいと思う。
    でも多くのバンドのボーカルは好きになれず積極的に聞くことはないなと思った

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  7. そっか、「チョコ食べたいけど太るの困っちゃう」
    「涙見せず平気な私を演じてるの」とか、
    女性が鼻ピアスあけたりタトゥーいれたりしなくても
    気軽に聴きにいけるメタルを発明したんだな。
    社会的メッセージむりくりには読みとってほしくないけど…
    「イジメだめ」「私たちはひとつ、いつでもそばにいる」
    くらいよ、ジェンダーはさほど関係ない。

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  8. メギツネは別にジェンダーうんぬんは関係ないと思うんだけどなあ

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