2016年4月12日火曜日

【Hysteria Magazine】特集記事 / SU-METALインタビュー

BABYMETALが表紙を飾るオーストラリアの電子雑誌「Hysteria Magazine」掲載インタビュー。
iOS/Android用に提供されているHysteriaアプリから無料で購読可能です。



尚、本文記事のSU-METALの発言には相当な編集が加えられていますので、その事も念頭に置いていただいて読んでいただければと思います。


狐の力によってBABYMETALは打ち勝つ

TOM VALCANIS著

西洋と東洋が重なり合う日本

東京には灰色が広がり、巨大な橙色の東京タワーが貫き、宇宙から見れば、東京は他の大都市と変わらないが、地上では、色とりどりの光が原宿の顔それぞれを照らし、キッズ達が秋葉原のアーケードを駆け抜ける。酔っ払ったサラリーマンは深夜に新幹線へとさまよい家路につく。我々外国人にとっての日本のイメージはKawaii (可愛らしさ)と奇妙さの滲みだ。Kombiniの群れであり、新しさの象徴である。西洋人にとってBABYMETALはそのイメージの一部だ。マンガ、アニメ、狂ったバラエティ番組を思い起こさせる。知っているはずだ。それは炎、それは可愛さ; それは赤、黒、そして其処彼処にダンスが。それがBABYMETAL。それがポップスとメタルの世界に旋風を起こしている。

キツネの神へ入り込む

ステージで起こる全て、ステージ外の全てが、BABYMETALの神話を創り上げる。プロレスと同様、全ては「真実」だ。現実世界においては、その十代のBABYMETALは2010年に日本人アイドルポップグループとして結成された。その目的: Kawaii Metal — Japan Pop(J-POP)とヘヴィーメタルの不浄なる融合を広めるため。

その目的達成のため、タレント事務所アミューズはポップに有望な中元すず香またはSU-METAL(18)、水野由結またはYUIMETAL(16)、菊地最愛またはMOAMETAL(16)を採用した。彼女達のステージ上のペルソナと本物の彼女達自身の切り替わりを判断するのは難しい。非公式には彼女達のプロデューサーKOBAMETALがその子達のために全ての手筈を整えていて、歌い踊る事以外の全てを整えている。それであっても彼女達はより高くからの力へ答えるのだ — キツネ、FOX GOD。

「BABYMETALがこの世に生まれてから、FOX GODが常に行き先を示してくださるんです。」姉でありBABYMETALのリーダーでもあるSU-METAlが通訳をつうじて語る。伝声管に向かって話しているかのようで、英語による返答が返ってくるまで2人の日本人の霊が会話をする様を聞いている。「キツネが啓示をもたらしてくださって、未来に何が起こるかを教えてくれるんです。だからFOX GODを信じているんです。それが誰なのかわからなくても。」

信心が事をなす。彼女達の信じる想いが従来のデビルホーンではなくFox Godのハンドジェスチャーとして表れる。その信心がBABYMETALを国際的なスーパースターダムへと導いたのか?

「いつも新しい啓示がFOX GODからもたらされて、それは時には凄く大きなイベントや啓示です。時にはBABYMETALがそれを乗り越えられるのかわからないものや、実現できるのかわからないものも、FOX GODからくるものですから、FOX GODがおっしゃられるままに従うための勇気をくれるんです。」

Fuse TVとの最近のインタビューにおいて、KOBAMETALは懐疑論者に対してFOX GODを信じるかどうかは各々が選ぶべきだと答えていた。もしFOX GODが本当にいるのなら、
神々しい起源を納得させるリフを使い、雷を崇拝するメタルヘッズを商業的ポップによる悪魔の王国へと乗り換えさせた。
「BABYMETALのライブに来たり、音源を聴く方にはメタルからきている方もポップスからきている方もいて、BABYMETALの影響でメタルファンがポップスを聴いています。」SU-METALが明言する。「ポップスファンはメタルを聴き始めていて、同じようにメタルに今まで触れた事がなかった方達がメタルに触れています。両方のジャンルを含んでいる事で、お互いがより強くなっていっているんです。」

壮観でKAWAII野外劇

もし君がヘヴィーメタルバンドの一員か、もしくはそうありたいと願っているなら、君の目標とは地球上最大のメタルライブをやる事だ。Iron Maidenが彼らの威厳を魅了するフルアリーナライブで披露する。ピラミッド、スフィンクス、マスコットであるEddieの3メートルあるミイラがPowerslaveが演奏される中バンドを追う; それがメタルヘッドの夢見る世界。BABYMETALはみすぼらしいライブハウスで精を出したり、汚いバンの床で寝る経緯を飛ばした。彼女達を支える財力でもって、濃いミネラルがそこにある。エジプトとインダストリアルをテーマにした精巧なステージ。炎、風、そして雷。痛まないギリギリの線で抑えられたボリューム。それらがフリルのついた赤と黒のドレスで着飾る事と信念を共にする。

「黒のTシャツを着るほど単純ではないんです。私たちのメインの色は赤と黒で、それは最始まりから顕著で、メタルでも同様です。私たちはスカートを着ます。とても女の子的な。同時に私たちは鋲や他の要素を衣装につけていて、それで男性的ではなく、もっとメタルなものを象徴しています。非常にハードななにかと、可愛らしくてより柔らかいもののコンビネーションは私たちを象徴するものです。」

ハローキティーがゴスになり、チェーンソーを振るう美学で、彼女達を日本人の尖峰に投げつける。それは世界のロックスターダム。彼女達は2014年3月に名のある武道館アリーナを埋めた — 結成から4年で。

「日本人アーティストにとって[武道館]は誰もが立ちたい場所です。」SU-METALが言う。「私が若かった時、アーティストになる事を夢見ていた時、ずっと武道館でパフォーマンスするのが夢でした。私たちがステージに立っている時でさえ現実だと飲み込めていませんでした。ソールドアウトした場のお客さんを見て、[やっと]私たちは武道館にいるんだって気づけたんです。現実的じゃなかったです。」

思い出してくれ。無理解から摘み取られた「メタル」バンドなのだ。平均年齢17歳のバンド。BABYMETAL以前はSU-METALはメタルが何なのかを知らなかった。彼女は仕事の中で学んでいかなくてはならなかった。幸運な事に、彼女は最良から学ぶ事が出来た。

「私にとって最初のインスピレーションはMetallicaです。」彼女は言う。「初めて見たメタルバンドのライブだったんです。それは2013年のサマーソニックという日本のフェスでした。全く違うレベルにいる伝説的なスターがステージにいる事を見るのはとても新しい経験でした。その音楽が響いたんです。今、私がやり続けられているインスピレーションを与えてくださった事を彼らに感謝しなくてはなりません。Metallicaに追いつけるようにしているんだと思います。」

西洋からの注目を集めるまでは時間の問題であった。アヴァンギャルドを常に求めるLady GagaがBABYMETALを2014年のArtRaveコンサートの内5本のオープニングに招いた。どこでパフォーマンスしようとも、BABYMETALは懐疑論に打ち勝った。

「皆さんLady Gagaのコンサートのために集まっていて、BABYMETALのコンサートのためではありません。」SU-METALは言う。「私たちは感じました。なるほど。この人達は私たちのための用意ができていない。」

彼女達に必要だったものは時間だけだった。SU-METALは思い返す。

「パフォーマンスをしていくと、私たちからお客さんがFox Signを掲げているのが見えました。私たちはそれをいつもダンスの中で掲げていて、それをファンに向けています。Lady Gagaのライブでも、ライブの半分に差し掛かると、Fox Signを掲げたり、私たちがなんて歌っているのかわからないのに一緒に歌ってくださってました。Lady Gagaのライブでお客さんに受け入れてもらえたのは私たちにとって驚きでした。」

言語の壁の単なるもう一つのレンガ

SU-METALが言ったようにBABYMETALが何を歌っているのか多くの西洋人は知らない。全て日本語で歌われ(時折英語のフレーズが入る)、曲の意味は消失する。日本人のファンにとって、それらは全てポジティブさだ。シングルIjime, Dame, Zettai(No More, Bullying Foreverと訳されている)は一般的なヘヴィーメタル作品ではない。

「リスナーを鼓舞するたくさんのメッセージが私たちの音楽には込められています。普通、メタルの歌詞はとてもダークだったり陰鬱です — 私たちは伝統から離れてなにか私たち独自のことをやろうとしています。歌詞にポジティブなメッセージを込める事で実現していて、メタルアーティストにとってよくある事ではないかもしれません。」

メタルにおいてもポップスにおいても、BABYMETALは基本的なルールを破る事で非難されてはならない — 退屈になるなというルール。ファンはBABYMETALのメッセージのために集まるのではなく、その音楽のためだ。公式に認められてはいないが、BABYMETALは他のメタルアーティストともコラボレーションしており、そこにはChristoher Amott(Ijime, Dame, ZettaiのNemesis version)そしてニューアルバム「メタルレジスタンス」のRoad of ResistanceはDragonforceのSam TotmanとHerman Liが共作している。その曲のトレイラーでは、世界中の満員の観客にSu、Yui、MoaがBABYMETALフラッグを振る様を見せる。結束させているものは明らかだ。

「私たちの音楽はキャッチーです。とても入りやすい音楽です。歌詞がもっとポジティブだったり、やる気を起こすものである事も含めて、それがBABYMETALが何かを総括しています。私たちが普通じゃない事で、普通や伝統的なメタルにとても慣れたファンがBABYMETALに興味を持ってくれているのかもしれません。」

次はなに?

BABYMETALは4月1日 – Fox Day – に象徴的Wembley Arenaでメタルレジスタンスに着手する。そのような権威あるスタイルでツアーをはじめられるポップバンド、ましてメタルバンドは一握りだ。彼女達は7月までアメリカとヨーロッパをツアーでまわり、豪勢な最終日は東京ドームだ。彼女達を止めるものは僅かだ — ヘイターは不採用。

BABYMETALは今年の呪われしSoundwave Festivalに登場するはずだった。ガッカリしたファン*1や興味本位の観客と共に。オーストラリアの地に来ることはあるのだろうか?

「Only the fox god knows」SU-METALは言う。「もちろん私たちがどこに行くかを決めるのはFOX GODです。でも私たちは行きたいと思ってます。」

アイドルカルチャーとはなにか?

もし君が西洋文化がセレブリティと悪巧みに取り憑かれていると考えているなら、日本は40年近く前にそれを煮詰めて生成した。アイドルカルチャーはKawaiiの皮肉なき崇拝だ: 若さ、美しさ、そして容姿端麗。タレント事務所が製品を推すためにアイドルポップグループを急ごしらえする — それを化粧品、雑誌、はてはインスタントラーメンへとしていく。時にそのグループは新しいタレントの為の乗物でしかなく、年を取ったスター(20代半ば以降)はメインストリームのアーティストへと転向するか、無名の存在へとなる。今日のBABYMETALが5年後のBABYMETALでなくなっている可能性は充分にある — もしくはもっと早くに。SU-METALはそれを知っており、その事について説明した:

「日本のアイドルカルチャーが海外であまり知られていない事や、日本独特のものだという事は事実です。」SU-METALは言う。「それはアイドルカルチャーとしても知られる日本のポップスカルチャーです。それはBABYMETALにとって特別なもので、日本独特のもの両方をメタルと合わせた事で世界に知られるようになりました。」


訳者注釈:
*1 ガッカリしたファン
例年、Soundwave Festival運営(交通手段の不備等)に対して、観客、アーティスト共に強い不満が出ていた事から、その事を指したものと思われる。

12 件のコメント:

  1. 卒業制度とベビメタは関係ないと思うけども…
    なんだかなぁ
    翻訳ありがたいです!

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  2. 長い文章ありがとうございます。

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  3. 卒業制度ってのは入れ替えを最初にやったモー娘以降の話じゃね?
    その前から年取ったアイドルは別の道で活動しなきゃいけなくて
    アーティストや俳優として活動するか、グループの看板が外れたら売れなくなって消えていくってことでしょ

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  4. アイドルについての誤解や偏見は、AKBに対する悪評がベースにあるんだろうね

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  5. 卒業制度は無いにしてもあと何年今のベビメタのスタイルが維持できるかわからないから、その間に完全燃焼してほしいし、ファンとしても見届けたいと思う。

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  6. 翻訳おつかれさまです

    キツネ様を信仰しないのはかってなんだけど
    じゃあ、インタビュアーは何を信仰してるんだって話で
    そこらへんがふらふらしてるからシニカルが安っぽいだよなぁ

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  7. 破産?したSoundwave Festivalから早々に手を引いたのは、陣営の英断でした。

    豪チャート総合7位ですもんね。ぜひ行ってあげてほしいです!

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  8. これは読みごたえのある記事でした。
    ベビメタはアイドルという狭い括りには収まらない存在になりつつあると思います。
    もしさくら学院で卒業してベビメタをやめていたら三人は当にメディアから消えていたかもしれません。
    実力もさることながら強運を持ち合わせていないとここまで来れていないと思います。

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  9. "メタルファンがポップスを聴いています。」SU-METALが名言する。「ポップスファンはメタルを聴き始めていて"

    s/名言/明言/

    でしょうか?
    ※このコメントは消していただいてもけっこうです。

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    1. ご指摘ありがとうございます。「明言」です。
      記事修正致しました。タイポもご指摘ありがたいです。

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  10. 卒業とか解散とか、想像で色々言ってる人たちが居るけど、パフュームって前例があるんだから、メンバーが辞めたいと思ったり何かアクシデントが無ければ、最低でもパフューム姐さん達と同じ年齢位までは続けられると思うんだが・・・。

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  11. このライターの立ち位置が不明。皮肉ってるのか、少なくとも持ち上げてはいない。トップ絵とは別の写真のタイトルに"BUBBLEGUM OR BRILLIANT?"(低俗なのか素晴らしいのか?)とあったから、ベビメタの人気に懐疑的なんだろうけど。

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