いかにBABYMETALがイギリスでのジャパニーズメタルリバイヴァルを導いているか
10代のグループの成功は海外で高まるジャパニーズメタルへの欲求の始まりに過ぎない
Thea De Gallier著それは土曜の夜、ロンドンの12,500のキャパシティーを誇るWembley Arenaはほぼ満員だった。ステージ前から炸裂するパイロテクニックの爆発同様に観客は腕を高く掲げ、
同じ白いローブを身に纏ったフォーピースバンドが耳を割くリフを演奏する。ホール真ん中の演台上、赤と黒のチュチュを纏う3人の10代の女の子達が立つ。彼女達の動きはシンクロし、吠えるギターの上で高い鼻にかかった音で歌う。彼女達の後ろのスクリーンには熱狂する東京の観客の映像が映し出される — そのコンサートは何千もの日本のファンへとライブ中継されているのだ。これがBABYMETAL。ヘヴィーミュージックと日本の女性アイドルグループの作り上げられた可愛さを融合させた「メタルアイドル」グループだ。彼女達がイギリスの観客へと紹介されてから2年、ファンに混乱、興味、動揺を同等に与えた一過性の存在から、ジャパニーズメタルの中だけでなく、より広いメタルというジャンル全体にとっての大傑作へと変化した。
BABYMETALは既に主流音楽媒体において充分な回数言及され、ジャパニーズメタルを掘り下げた事のない客層へと届けられた。そのようなインパクトを与えたバンドは彼女達が初めてではない。10年前、ジャパニーズメタルバンドDir en greyもイギリスのメタルシーンにおいて、近しく迅速な隆盛を経験していた。それはCamdenのロックパブDevonshire Arms*1にて毎月開催されていたJ-rockナイトPropagandaに集まっていた熱心なアンダーグラウンドファン層のおかげである。2007年、Adam Sagirは彼のPR会社The Noise Cartel(BABYMETALと仲間の日本人ロッカー達Crossfaithを代理)を起業したところであり、試験的にDir en greyのプロモーション業務を担当していた。日本語で歌っており、日本国外の大部分では知られていない存在であった。「俺は『これはプロモーションを依頼される中でも最も難しいものだ。なぜって誰がこれにハマるんだ?』って思ったよ。」そのように彼は想起する。しかしPropagandaを訪れただけで、彼は未開のサブカルチャーを発見する事になる。
「その夜にいた多くの人々は、NightwishやWithin Temptationといった女性がフロントを務めるメタルバンドのファンだった」Sagirが語る。「そして日本文化に大きな関心を持っていて、MySpaceで[日本のバンド]のビデオを共有していたんだ。自分が全く思いも寄らなかったサブカルチャーがそこにあったんだ。」Dir en greyの二夜連続でのIsligton Academy*2ライブの情報をイギリスの音楽媒体が僅かに触れられただけにも関わらず、完売した事でそのファン層の本当の力と大きさが明かされる事になる。その2年後の2009年、SagirはKerrang!で彼らの表紙と特集を獲得し、彼らはBring Me The Horizon、Mindless Self Indulgence*3と共にKerrang!ツアーを回る。ジャパニーズメタルがより広いロック意識への浸透を始めたのだ。イギリスを拠点としたジャパニーズメタルレーベルJPU Recordsの起業主であり、英語によるジャパニーズカルチャーマガジンNEOのライターであるTom Smithも、その成功はここ10年の間に隆盛したものだという事に同意する。「私がNEOで日本のロックバンドについて書き始めたのはちょうど8年前の事で、それからどんどん拡大していっています。」と彼は言う。
ジャパニーズメタルの母国以外でのインパクトは、日本で最も有名なメタルバンドの一つX Japanのキャリアを纏めたドキュメンタリーWe Are Xがサンダンス映画祭で1月にプレミア上映され、ワールドシネマドキュメンタリー部門の最優秀編集賞した事でも証明される。SXSWにてバンド発起人の一人でもあるギタリストのYoshikiのライブパフォーマンスと共に再度上映された。本年、ニューアルバムの発売を計画中 — ここ20年で初となる — だが、ギタリストPataの重大な病態により延期された。それでもそのドキュメンタリーがVariety、Loudwire、Pasteといった主流媒体に取り上げられたという事実は、X Japanの影響が母国から遠く離れた西洋にも同等に届いている事を示す。
X JapanとDir en greyは日本からのグラムロックへの返答「visual kei」のパイオニアだが、それだけに焦点を合わせるのは公平ではない。グラムロック自身と同様、visual keiは明らかにレトロだ: Dir en greyはそのキャリア後半において積極的にそこから距離をとっており、ギタリストの薫は「十代の女の子の興味をひくためのジャンル」と2007年のインタビューで否定している。日本の音楽シーンはグラムロックが流行する以前からインスピレーションを求めて西洋に注目していた。日本のパンクバンド少年ナイフのリードシンガー山野直子が説明する。「私が十代だった時には多くの若者はアメリカかイギリスのロックを聴いてました。」彼女が言う。「私達のニューアルバム[4月1日に発売されたAdventure]は、Judas Priest、Black Sabbath、RainbowやDeep Purpleといった70年代のロックに影響を受けたものです。」ジャパニーズメタルファンがDevonshire Armsに集うよりずっと前、アメリカのインディーレーベルK Records*4とSub Pop*5からの関心、1980年代半ばにJohn Peel*6でのライブによってパンクファンは少年ナイフを発見していた。そしてSonic Youth*7とNirvanaのサポート枠が続き、少年ナイフはカルトステータスを獲得する。
2016年、ジャパニーズメタルへの関心が増大する状況は完璧に整っている。BABYMETALがファンの注視を東方へ向け、現在の日本のヘヴィーバンド達のラインナップは、親和性とサプライズの完璧なバランスからなる音楽を制作している。山野は西洋からの影響を誇りと共に率直に語り; Crossfaithの最新アルバムXenoは英語で歌われ、BeartoothのCaleb Shomo*8とSkindredのBenji Webbe*9がフィーチャリングされており、一方メタルデュオVampsは80年代グラムスタイルでロックし、Nikki SixxのSixx:AM*10のアメリカツアーを昨年サポートした。メタルより甘いメタルコアに近いOne OK Rockは英語で歌い、白人の役者をミュージックビデオで使っている。「日本の音楽を聴かずに育ってるんですよ。」Crossfaithのベーシスト池川寛希はそう言う。「俺の初めてのレコードは[アメリカのポップ-パンクバンド] Yellowcardだったし、[ボーカリストの小家健太は]」Aerosmithだった。とても自然な事なんですよ。」
「初めてCrossfaithを聴いた時、とても変わっていてクリエティブに聞こえたと同時に、それでも馴染みがあって魅力的に感じられましたね。」オーストラリアのレーベルUNFDのトップでありCrossfaithとも契約を交わしたLuke Logemannが言う。Adam Sagirは音楽媒体がリスクを取る事を恐れるシーンにとって、日本人バンドはエキサイティングな存在だと更に付け加える。「昨今の音楽メディアはは既にうまくいっているものに対して反応を示しやすい。バンドをブレイクさせるのではなく、既にうまくいったバンドを助力しているだけなんだ。」彼は言う。「それが意味するのは、同じバンド — 流行していたり、ずっと続いている魅力をもった — がメタルメディアを支配しているという事。ヨーロッパ人によるメタルがなしえなかった方法で、エキゾチックな要素を持ったもの全てが興味と討論の火種になったんだ。」BABYMETALは成功した一方、未だに対立を生む。「幾らかの純粋主義者のメタルヘッズにとっては不快だったんだ。」Sagirが言う。「そして人々が2014年のSonisphereで彼女達を見て、『やべえ、これ実際すげえいいじゃん!』ってなったんだ。」オルタナティブミュージックとジャパニーズカルチャーは他の形で度々出会す事があり、それらの関係はこの数年で増してきている。ヘヴィーレーベルMetal Blade Recordsは昨年のNew York Comic Conに出展し、今年は女性メンバーのみの東京のロックグループBand-Maidが初のヨーロッパライブをMCM London Comic Conで5月に行う。「非常にローカルな文化とメタルが交わる事に人々は興味をそそられているんです。」Logemannが言う。
山野直子とCrossfaithのどちらもがメタルは日本ではマイナーなジャンルだと言う。そのためメタルバンドがより大きなファン層を求めて海外に目を向けるのだろう(池川寛希はイギリスがCrossfaithにとって「日本に続いて二番目に大きなファン層」と言っている)。「にほんっではポップスが他のどんな音楽よりも巨大なんです。」池川が言う。「ディズニーのもの — One Direction、5 Seconds of Summer、Ariana Grande。でもBABYMETALはメタルへの入口です。彼女達が障壁を壊したんですよ。」Crossfaithの小家健太も同意する。「彼女達が日本のフェスに出演すると、そこには同じ衣装を着た多くの若い女の子達が集まります。」彼が言う。「それは良い事だと思うんです。[人々をメタルに紹介する]それが彼女達の役割なんだと感じています。」
BABYMETALのWembleyライブを見るためにロンドンと東京に数千*11人が集まっているという事は、その目的を達しているという事だ。彼女達はワールドツアーへと旅立ち、日本人バンドは引き続きイギリスのシーンへと入り込んでいく: 去年、Vampsは
ロンドンのIndigo2で開催された新しい日本人バンドのショーケースのトリを務め、Bullet For My ValentineとWhile She Sleepsのヨーロッパツアーのサポートに昨今選ばれたmetalcoreグループColdrainは初のイギリスヘッドラインツアーを5月に行う。
イギリスに日本から中級バンドを持ち込んで国中の重要な会場をまわるツアーを行う事ができるファン層が存在するという事実は、ジャパニーズメタルへの興味がどれだけ増大しているかを示すものだ。JPU Recordsは引き続きカタログを増やしていき、先月にはHello World — 日本人の全員女の子によるロックバンドScandal初のソロワールドツアーのドキュメンタリー — をイギリスで発売した。NEO Magazineは未だに強いが、オルタナティブなジャパニーズカルチャーを紹介する唯一の情報源ではなくなっている。BABYMETALのWembleyライブは至る所でプレビューされレビューされた。NMEやMetal HammerからThe Guardian、The Daily Star、さらにはBBCまで。ジャパニーズメタルはメタルの風変わりな一角などではもはやなく — その鍵となるバンド達は西洋のシーンで確立し、騒音を引き起こせる事を証明している。
訳者注釈:
*1 Devonshire Arms
ロンドンで最も有名なオルタナティブ会場とも呼ばれ、Camden初の「ゴス」パブとしても知られている。
*2 Isligton Academy
2002年にオープンした会場。
メイン会場のキャパシティーは800。
*3 Mindless Self Indulgence
インダストリアルの影響が強いアメリカのロックバンド。
ツアーのヘッドライナーを務めた。
*4 K Records
アンダーグラウンドなパンクバンドを多く排出する影響力の高いアメリカの老舗レーベル。
Go!TeamやBeckがリリースしていた事もある。
*5 Sub Pop
グランジブームの立役者となったアメリカのインディーズレーベル。
Nirvana、Sound Garden、L7など当時人気を博した多くのバンドがSub Pop出身である。
*6 John Peel
BBCの重鎮DJ。故人。
ここでは彼の番組の事として述べられている。
多岐に渡るジャンルのバンド、アーティストを取り上げ、また特に前衛的なバンドやハードコアバンド、フリージャズ等、他のDJが積極的にプロモーションしないバンドを表舞台に送り出す役割を担った。
*7 Sonic Youth
ニューヨークのバンド。
エクスペリメンタルパンク、ノイズ等、エッジの立った音楽性を見せる。グランジムーヴメントや現在のインディーロックシーンに多大なる影響を与える。
日本の前衛音楽家との交流が深い。
*8 BeartoothのCaleb Shomo
Beartoothはアメリカのメタルコアバンド。
Caleb ShomoはボーカリストでありCLASSというEDMソロプロジェクトでも活動している。
*9 SkindredのBenji Webbe
ニューメタル、メタルコア、レゲエ、Dubstep等々、数多くの要素を融合させたウェールズのバンド。
Benji Webbeはボーカリスト。
*10 Nikki SixxのSixx:AM
Motley CrueのベーシストNikki Sixx。
彼が結成したハードロックバンドがSixx:AM。
*11 数千
原文thousands。英語には万という位がないため、日本語で万単位となるものも数千という表現がされる。
ソース: DAZED
他の日本の実力あるバンドにチャンスが増えるのは良いことですね
返信削除babymetalも逆にそれらの人が努力して切り開いてきた土壌から
チャンスをつかんだって言う相互の助け合いはあるでしょうが。
Crossfaith曰く、BABYMETALはバンドじゃないけど、METALだ!
返信削除Crossfaith のMonolith (Live At Download Festival 2014)を見てからファンだ!
バンドではないのかも知れないけど
削除こういう発言はしない方がいいと思うなぁ
神バンドが聞いたらいい気しないと思うんだよね
BOHさんがニコ生でバンドのつもりでやってるって言ってたし
いつも翻訳ありがとうございます。
返信削除以前翻訳された【海外ブログ】BABYMETAL LONDON 08 November 2014のDAVID FLINT氏がウェンブリー・アリーナのレビューを書いています
http://reprobatemagazine.uk/2016/04/03/review-babymetal-wembley-arena-london-2-4-16/
情報提供ありがとうございます。
削除本日中に訳させていただきますね。
こちらの記事、内容がかなり乏しいので翻訳後回しにさせていただきます。
削除他の記事翻訳が終わりましたら取りかかります。すみません。
翻訳お疲れ様です!
返信削除どうせならマッドカプセルまで掘り下げてもらいたかったですねぇ
上田氏は現にかかわってるし
まあマッドはメタルじゃないしね
削除こちらさんのコメント規制すごいですね。
返信削除自分のカラーと違うものは一切排除するんですね。
ファンと共有言うより個人の趣味サイトですね。
ググタスの古参さんが言っていたの変わり者のサイトは此処だったのか。
これも消すんだろうなー
違法コンテンツへと誘導していたもの以外、コメントは今のところ削除していません。
削除うだうだ言うなら自分で訳せよ
削除明らかに個人の趣味のブログやんね、
削除他のなんや思たんやろ。
春んなるとこういうの湧いてでるわー。
日本にも沢山世界で受ける曲を書いている人が居るのを知ったのがベビーメタルなんですよねー。ベビーメタルのパフォーマンスはこの際置いておいて、逆輸入作曲家、作詞家、ミュージシャン状態なのが自分の状態ですかね。
返信削除何で気付かなかったのかっていうとビジュアル系とかミク系なんて興味もなかったしアイドル系、アニメ系なんていうのは絶対恐怖領域を形成してほぼシャットアウトしてましたからね。もちろんデス声が乗ったメタルは論外。
町中で耳にする音楽は同じような曲調か、ちょっと引っかかってもどいつもこいつも何歌ってるのか全然わからないし。
自分的にここまで書いてて言うのも何ですが、そりゃ音楽に興味なくなるわって気が付きました。
メタルなのに聴きやすくてボーカルがハッキリ何を歌っているか聞き取れて楽器隊がちょっと聴いただけで上手いというか、きっと凄いミュージシャンなんだろうなって思えて、さらに歌ってる内容が無邪気で微笑ましいベビーメタル。
成功の方程式なんてありはしないでしょうが、何が大事かはベビーメタルの中に有る気がします。
知らない間に復活してたんですね。ありがとうございます。
返信削除うるさい奴の事はきにせずお願いいたします。
お台場行ってたけど、実際は東京だけじゃないんだけどな
返信削除お台場だけウェンブリーに映っても仕分けない
他の会場は骨さんたちいたの?
Crossfaithさんも、最初はベビメタを否定してたと思ったけど、大分認識が変わったんだな。
返信削除何か最初嫌っていた人が、いつの間にかファンなってるのと被る。w
Crossfaithはベビメタのファンにはなっていないと思うよ。今でも好きではないが、大人の事情でディスることができなくなったんだろう。言葉の端々にそれが見え隠れしている。真相は知らないが、事務所に釘を刺されたという噂もある。
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