2019年10月27日日曜日

【THE ROCKPIT】METAL GALAXYアルバム・レビュー


アルバム・レビュー:Babymetal - Metal Galaxy

Brendan Driscoll著

禅の公案は必ずしも深いものである必要はない。良い公案は新たな考え方へと開眼させてくれる。パラドックスこそが鍵なのだ。時に、両立しないと見受けられる実在同士の衝突も起こり、当初の困惑を経た先に、使いつくされた基準枠から我々を解放する。

Babymetalとは、パラドックスを具現化したものだ。元祖「Kawaii Metal」バンドは、ヘッドバンギングさせるマイナー調の暴力性と、可愛いアップテンポな日本人アイドルポップスを融合させ、その双方の親の持つハイエナジーなDNAを活用しながらも、自己矛盾、誇張、そして立場の危うさというリスクを冒していた。ステージ上のBabymetalとは、全てをライブパフォーマンスの為に創り上げたバンドであり、ツインテールの髪、ゴシックロリータファッションに身を包んだ、3名の若い女性によるバンドだ。非の打ち所のないダンスの振付には、古典ロックのウインドミルアームを取り入れていながら、日本の伝統的ダンスの動きや旋回も取り入れている。コープスメイクを施された、ほぼ固定のメンバーによるバッキングギターは、ヘヴィーで、テクニカルで、デジタルエフェクトで歪んでいるが、ボーカルは快活かつ陽気で、メタル型のスクリームへと転換する事は極稀だ。歌詞は殆ど日本語で、苦悩するメタルテーマと、愉快に夏をクレイジーになって踊って楽しもうという内容とを行き来する。


バンドは2010年に結成され、2014年にはアメリカBillboardにセルフタイトルデビューアルバムがチャートイン、そして注目を集めるコンサートに参加した事も合わさり、世界的になる。共演した有名バンドには、Megadeth、Metallica、Slayer、そしてLady Gagaがいる。まだBabymetalメンバーの平均年齢が15歳以下だった頃、全員が女性メンバーのグループとして武道館に立った最年少記録を達成している。

しかし21世紀である現在、Babymetalを成層圏へと押し上げたのはYouTubeだった。メジャーシングルであり、Babymetalブランドを紹介するキャッチーな「Gimme Chocolate!」のビデオが1億700万再生され、「Despacito」や「Baby Shark」の一帯へと押し出したのだ。Shark、すなわちサメにも例えられるのだが、Babymetalは、妙に不安定なポジションに身を置かれている。(メタルファンにとって)露出過多で、(他の一般にとって)目に見えない存在である、という中間に位置している。Babymetalと、その庇護者たる神Fox Godを、ポップカルチャーの同等品と共に在庫一掃セールの棚に置いたまま、世界が先へと進んでいく事は、どの時点においてもあり得た事だ。最新のクリックベイトに飢えた世界において、彼女達の運命は、2015年時点での見立てでは、そこから不可避であると思われていた。

そして、そのことが10月11日に全世界で発売されたニューアルバム、Metal Galaxyにつながる。Metal Galaxyはバンドのサードスタジオ・アルバムであるが、ある重要な意味において、これはデビュー作と同等である。Babymetalが一過性の流行から、ハイブリッドメタルの可能性という世界へ、新たに進むという意味においてだ。

昨今では慣習となっているように、多くは過去数年でオンラインにて事前発売されていた収録曲は、多岐に渡るもので、そのバンドの過酷な国をまたぐ旅に影響を受けたもので、半ダースほどの人数の西洋、そして日本人アーティストとコラボレーションをしている。ボーカルは快活なままであり、ギターはタイトで、そのコントラストというバンドの持ち味は、過去最高に明瞭だ。Babymetalは落ち目になり、悪あがきをしているのだろうか?その可能性もあり得る。だがMetal Galaxyとは、本格的な芸術性へと本気で舵を切った表れなのだ。

コラボレーションは、このアルバムにとって主たる特徴だ。スウェーデンデスメタルバンドArch Enemy、カナダ人バンドAgonistののボーカリストAlissa White-Gluzが、マシンガンのようなベースドラムとハイスピードなクランチの「Distortion」で歌い、タイ人アーティストF. Heroがラップ(とタイ語)を、昨夏の日本とアメリカのBillboardチャートのヒット作である活発な「PA PA YA!!」にもたらす。プログレッシブ・ロックバンドPolyphiaのTim HensonとScott Lepageが、「ジェント」の感触と、心地よい巧みなギター間奏を、絶対的にキャッチーな「Brand New Days」にもたらす。グラミー授賞ギタリストのTak Matsumotoが、ハイテンポなエレクトロニック・ヘッドバンガー「Da Da Dance」に登場。Marty Friedmanの手によるハイブリッドなJ-popリードギターをも思い起こさせる。

国際的な質感がアルバムを通して表れており、過去作にはなかった広がりをMetal Galaxyに与えている。Sabatonのフロントマンであるスウェーデン — チェコシンガーJocke Brodenが、「Oh! Majinai」で詠唱する咆哮と、レプラカーン・グロウルを響かせる。その曲のバグパイプと足踏みビートは、Dropkick Murphyのアルバムにあったとしても違和感のないものだ。「Shanti Shanti Shanti」には南アジアのモチーフがあり、「Night Night Burn!」には明らかなラテンのフレーバーと、楽しいコンガの展開がある。「In The Name Of」は、序盤ではシンセに支配されているが、一瞬でスカンジナビア・デスメタルへと方向転換する。

昨年末に結成メンバーであるYui Mizuno(Babymetal名:「Yuimetal」)が離れて以降、Babymetalの内包するダイナミクス自体も進化している。その別れは、互いに友好的なものであったと見受けられるものの、なぜYuimetalが離れたのかは不明瞭なままだ。健康上の理由に言及していたが、Yuimetalがソロキャリアへと進むのかもしれないという事も仄めかされており、バンドもYuimetalも語りそうな様子はない。公式メンバーを入れるのではなく、Babymetalの親会社である法人Amuseは、今のところAvengersとして知られるパートタイムのローテーションするキャストで、Yuimetalの位置をカバーしている。ニューアルバム用の広報用写真でフィーチャーされているのは、残る2名の結成メンバーであるSuzuka Nakamoto(「Su-metal」」、そしてMoa Kikuchi(「Moametal」)。優雅なワインレッドのローブを纏っており、哀愁を漂わせる真剣な表情だ。荒涼としているが、従来のKawaii全開の外観からの一時的な変化かもしれない。彼女達は年を重ねてみえる。今や彼女達は20代前半なのだ。

Babymetalにとって、最初の5年間において頻発した疑問点とは、マッシュアップ以上のものがあるのかどうか、という事であった。J-popとヘヴィーメタルの並置に感じられた新規性が過ぎ去った時、そこに何が残るのだ?ある意味においては、そこに答えを出すのはまだ早すぎる。アメリカの観客は、そのバンドがメンバー自身の手によってではなく、企業によって作り上げられ、運営されているという事自体に、未だに慣れようとしているところなのだから。純粋主義なメタルヘッズ達は懐疑的な傾向にあった。メタルヘッド中のメタルヘッドであるJudas PriestのRob Halfordが、Babymetalへの愛を公にしても。本ツアーにおいて、多くの観客が参加するモッシュピットが出来ていても。

だが、Metal Galaxyの厳密さと寛大さが示唆しているのは、Babymetalが見つけ出した物とは、力強く、異文化間を股にかけ、世代を交わらせるハイブリッドであり、メタルを根深い習慣から自由にする能力を備えたものだ、という事だ。そのインターナショナリズム、その最先端のクランチ、そしてその抵抗不能なキャッチーさ。Babymetalによる最新の宣言とは、メタルのラウドなギター、ハイエナジー、モッシュピットを良しと認めると同時に、メタルの欠点への暗黙の批判をも提案している。メタル自体を深刻に捉えすぎる事、その均質性、そして相対的な女性の欠落に対してだ。

Babymetalは、パラドックスの力を示する良好な例である。ヘヴィーでありながら、同時にライトであり、間抜けでありながら、真剣であり、赤い肉でありながら、Dagashi[訳注:駄菓子]キャンディーであり、空虚であり、いやむしろ卓越している。ジャンルの境界を曖昧にするものであり、国際的であり、とんでもなくキャッチーだ。

もしかするとBabymetalは、ただの馬鹿げたものかもしれない。だが、Metal Galaxyを聴き、Babymetalが未来かもしれないという可能性を考慮してみてはどうだろうか。

ソース:https://www.therockpit.net/2019/album-review-babymetal-metal-galaxy/

Ma-Metalさん情報提供ありがとうございました

7 件のコメント:

  1. ぶっちゃけ英語混じりの曲が好きじゃない
    欧米ではengrishなどと呼ばれて嘲笑の対象だ
    メギツネやKARATEなど日本語のみでも曲は作れる
    もう少し日本語を大切にしてはどうかな

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  2. はて?欧米と言う地域はものすごく広大で、多数の国家と文化、非英語の言語がありますが、嘲笑の対象にしてるのはどこの地域、国家のことですかね?

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  3. ベビメタは、日本語で、マイナーなヘヴィーメタル+超マイナーなJ-POPの融合で、20代そこそこの女の娘3人組で
    ビルボード13位、ロック部門1位、ハードロック部門1位は驚異的な記録 

    だが坂本九の記録を塗り替えたのはJojiの総合3位
    Jojiは、日本人が英語歌詞で、常にヒットチャート上位を占めるメインストリームサウンド(R&B/ラップヒップホップ)にチャレンジして
    日本人最上位の3位を獲得した 脱J-POP これも凄い記録 
    日本人が英語で歌って、しかもメインストリームで勝負なんて勝てるわけないと言われ続けて50年
    後に続く、海外志向の邦楽アーティストは、両方のパターンで成功する実例ができた あとはチャレンジするだけ

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  4. 同じ日本国籍でもJojiの場合は環境が違うのでベビメタと同列には語れないと思いますよ。
    Jojiはアメリカのレーベルに所属する向こうのアーティストであって、決して邦楽アーティストでは無いですから。

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    1. 高校まで日本で育った日本国籍の日本人が、アメリカで一旗揚げに行って向こうのレーベルに所属して、脱J-POPで英語歌詞で、メインストリームジャンル(R&B/ラップヒップホップ)にチャレンジして日本人最上位の3位を獲得した。日本人でもやれば出来る!
      日本は来日公演のベビメタは、英米中心で活動して一旗揚げようとと向こうのエージェントやプロモータと契約して、ビルボード13位、ロック部門1位、ハードロック部門1位になった。ある意味同列だよ
      日本人一流アーティストでもLAやロンドンに移住しているけど、日本が活動拠点で海外チャレンジはしないんだなこれが。 

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    2. あなたの「ある意味同列」に並べるコアは日本国籍のの日本人であると
      いうことのようですが、それ以外全然アプローチが違いますよね。
      それをなぜそこまで同列に並べる動機は何なんでしょうか?
      例えばですよ、米国籍の米国人がJPOPの作曲方法を理解し作曲し日本語で歌い
      アメリカのチャート上位に入った場合、あなたはそれを同列と
      みなすのでしょうか?これは結構大事なはなしで民族と文化は
      切り離せないないものか、文化を切り話した民族は民族といえるのか
      というはなしでもあります。

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  5. このレビュアーはすごく優秀だと思う。決してファンではないだろうけどBabymetalの提示しているものをきちんと把握している。やや浅いのはしょうがない。そしていつも翻訳ありがとう!

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