2016年4月19日火曜日

【ENUFFA】メタルレジスタンス レビュー

プロレス、映画、TV、音楽、ビール等について取り上げる個人ブログによる「メタルレジスタンス」レビュー

Justin Ballard著

日本人「アイドルグループ」BABYMETALとは、実際にそうであるようにその音楽が巧みに創り上げられていたり、音響的に価値のあるものとは懸け離れているべきバンドだ。そのグループは12歳のメンバーを含むJ-POPボーカルグループのプロデューサーが作ったJ分派である事を考慮すれば、不誠実な企業製作品として相手にしないところだった。しかしこのニューアルバム「メタルレジスタンス」を聴いた。なんてこった。これは良い物だ。

そのバンドの音楽は多数のメタルバンドとサブジャンルを称えている。特にDream Theater(バッキングの演奏者にとってあのような複雑なスタイルを再現する事は至難の業だ。つまるところ。)、Sevendust*1、Slipknot、Helloween*2のようなパワーメタルバンド、さらにはDubstepがあちらこちらに点在する。ギターとドラムの溶解する弾幕の頂点に、3名の十代の女の子達によるフックがあり甘ったるいメロディーが乗る。これら2つの要素はうまく混ざるはずもないが、どういうわけか上手くいっている。このアルバムの12曲はあっという間であり、Bieber*3のレコード向きのラジオ的なサビを充分に備えているが、Rockstar Mayhem Festival*4向きのマシンガンスピードメタルによる破壊も充分に備えている。ほぼ全ての歌詞は日本語だが、その事でためらうべきではない。それでもなお、そのメロディは頭の中に何日も残り続けるだろう。

オープニングの「Road of Resistance」は、このアルバムで最も疾走感のある曲の一つで、ブラストビートとバックグラウンドのデスボーカルがリスナーを強襲し、そしてリードシンガーのSU-METALが甘いメロディで飛び込んでくる。この曲ではHelloweenの影響が最も強く感じられる。

ずば抜けた曲の一つが2曲目の「KARATE」で、うねるミッドテンポのNu-metalグルーヴはSevendustのアルバムで聴けるようなものだ。そのサビはこのアルバムで最も力強いものであり、長年聴いたものの中で最も一瞬で記憶に残るフックだ; これはとてもプロフェッショナルな作曲だ。

3曲目、「Awadama Fever」も等しくフックがあるが、もっとシンプルな方向でだ。シンコペーションするビートの上でボーカルが踊り、滑稽ながらも疑う余地なく楽しい、何か風船ガムと関係あるサビへと進む。この曲は超ハイエネルギーだ。

大きなスタイルの転換が起こるピアノバラード「No Rain, No Rainbow」が、SU-METALのますます自信に満ちたボーカルを見せる。18歳ながら彼女はこれらの曲を誠に歌い上げている。彼女が成長していく先も聴ける事が楽しみだ。確かにこの曲はいくらか前に書かれたものだが、ライブで大規模に歌い、この曲の中に感情的に入り込めるまで、SU-METALはレコーディングする気が進まなかった。その時間が実った; 彼女はこの曲を本気で歌っている。

Dream Theaterの影響はアルバム後半の曲「Tales of the Destinies」の全面にある。その曲には変拍子、はじまっては止まるリフ、多くの拍子の変化が満載だ。しかしその後Helloweenのアルバムから飛び出してきたサビが爆発し、バンドが不可能なほどに速いリフを打ち鳴らす中、SU-METALによる高揚するサビのメロディが急騰する。

お気に入りの曲はアルバムのクロージング曲「The One」で、それは唯一全て英語で歌われている。歌詞はかなり粗野に書かれているが(おそらく翻訳のせい)、これはアンセム的なプログレメタルの傑作で、ロックオペラのグランドフィナーレに大変にふさわしいものだ。繰り返し聴いても決して飽きない貴重なサビを備えており、ついにフェードアウトでアルバムが閉じられても、もう一度聴き始める事が待ちきれなくなる。

メタルレジスタンスには、ラウドでエネルギーに満ちた音楽が好きな全ての人のためのちょっとした何かがある。それは巧みに制作され、玄人による演奏のヘビーメタル、そして聴くものの中でも最も忘れる事のできないキャッチーなフックが幾つもある。このバンドの裏にある推進力は商業主義の一つかもしれないが、その見かけと異なり繰り返し聴く高い価値のある挑戦的なハードロックアルバムに関していえば、BABYMETALは本物だ。現時点までの今年のベストアルバムの一つである。
*****中、****を与える。


訳者注釈
*1 Sevendust

90年代半ばから現在まで活動を続けるアメリカのメタルバンド。
グルーヴの強いリフとキャッチーなメロディのフックを両立させている。

*2 Helloween

80年代後半から90年代前半に(特に日本で)一世風靡したジャーマンメタルバンドの代表格。
現在でも活動を続けている。
蛇足だが、ドイツ人に「ドイツのバンドならHelloween知ってるよ」っていうと何故か笑われる事が多い。ドイツの民謡を採り入れたメロディで本国でも一般層からの注目を一瞬集めていたらしく、一発屋&色物扱いされている模様。
「演歌メタル」みたいなものが日本にあれば近い感覚になるのかも・・・。

*3 Bieber
ジャスティン・ビーバーの事。

*4 Rockstar Mayhem Festival
Mayhem Festivalというメタルを中心にしたフェスであり、同ラインナップで約2ヶ月間、全米とカナダをツアーでまわる形式のフェス。
昨年はSlayer、King Diamond、Hellyeah、The Devil Wears Pradaがメインステージに立った。
エナジードリンクのROCKSTARがスポンサードしている為にRockstar Mayhem Festivalという名称も使われる。

ソース: ENUFFA.com

7 件のコメント:

  1. たしかにあっという間なんだよな
    2、3曲少なかったらベストアルバムだったのに
    とか言う人いるけど、それじゃ短すぎるだろ

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  2. どこでもKARATE絶賛ですね。
    自分としてはそこまで良いとは思わないんだけどなぁ…
    歌謡曲文化の中で育った自分とは聞いてる所が違うんだろうなぁ…

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  3. 海外の方の感想で、初めて自分に近い感覚の物を読ませてもらいました
    外見的な部分が作品の評価に影響していないのがいいですね

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  4. 聞く人によって環境が違うし感じるものも違うんでしょうねー
    自分もべビメタ聞く前はPCで垂れ流して聞く感じだったけど、べビメタをヘッドフォンで聞いたら全然音が違くて
    おおーいままで聞き取れてなかった音がこんなにあるのかーって感じだったし

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  5. 翻訳ありがとうございます。
    素直で良いレビューですね。
    「不誠実な企業製作品として相手にしないところだった。しかしこのニューアルバム『メタルレジスタンス』を聴いた。なんてこった。これは良い物だ。」
    「企業のプロジェクト」だろうが何だろうが、音楽として良ければ公平に評価するというね。イデオロギーに囚われて公平な評価ができないサム・ダンとは大違いですね。

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  6. 清々しい気分に浸ることができるレビューだ。
    冷えたビール&babymetal無限ループに入ることにする。

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  7. 当てつけか?
    蛇足だ!アホw

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