The Guardianによるメンバー、KOBAMETAL、音楽編集者のインタビューを含む特集コラム。2014年11月7日に公開。
Daniel Robson著
メタルと「アイドルポップ」を融合する日本人の女学生トリオは、日本のギークなハードコア勢を引き入れる為に造り上げられた。世界中の信々深いメタルヘッドを彼女達はいかに引き込んだのか?そのバンドが全てを明かす。
これがBABYMETALだ: そのコンセプト自体は可笑しいものだ。日本の小さなティーンエイジャーの女の子達3人が、中年のヘヴィーメタルセッションミュージシャンからなるバンドの前でダンスしチョコレートが欲しいと歌うのだ。それは馬鹿げており、真のメタルファンには憎むべき権利がある。
しかし6月のSonisphere Festivalで証明されたように彼らはそうはしない。Daphne & CelesteからKelly Osbourne*1に至るまで、ロックフェスティバルでの斬新なブッキングに対して惜しみなく与えられる小便のつまったボトルがBABYMETALに対して投げつけられる事はまるでなかった。その代わりにシンジュクサイズのサークルピットが開かれ、殆どの真性メタルヘッドが - 陽気でユーモラスなバイオレンスで - 歓迎を続けた。
事実、彼女達はSonisphereで非常に受け入れられ、ロンドンのForumで行われた単独ライブでの充分なファンからのサポートを経て、ビクトリーランとしてBrixton Academyで演奏の為に戻ってくる。では何故イギリスの人々は糖衣された女学生のポップメタルグループを見たいと思うのだろうか?
Kobametalとしてより知られるグループのプロデューサーのKey Kobayashiは、男性かつ白人である事が普通である事に対しBABYMETALは新しい事に成功の鍵があると説明する: 「その歴史上、ロックはあまり変遷してきていません。」彼は言う。「世界の反対側から来たグループが、突如現れて奇妙な物を演奏しはじめた事で人々の注目を集めたんです。」
彼女達のブレイクスルーとなった曲ギミチョコ!!のビデオは、公開された2014年2月以降にYouTubeで1,700万回以上という再生回数を生成した。中世風のコルセットとフリルのついた黒と赤のミニスカートを纏う16歳のSuzuka Nakamoto(Su-Metal)、そして15歳のMoa Kikuchi(Moametal)、そしてYui Mizuno (Yuimetal)が巨大なマリア像の前で超キュートな振付のダンスを踊り、スケルトンの衣装を着たミュージシャンがバッキングし、メタルの力で世界を再び一つにするというビルとテッド*2的な冒険の旅の為、BABYMETALを選んだ神聖な存在である狐の神を基に改変されたデビルホーンを大群衆となったファンが掲げる。「See you in the mosh'sh pit」という困惑させる招待と共にビデオは終わる。
彼女達の美学がべらぼうであるのとおそらく同様、2014年リリースの彼女達のセルフタイトルアルバムはメタルの世界で真の優勝候補になった: それは日本でのみしか契約されておらず、全ての歌詞は日本語にもかかわらず、世界中のiTunesメタルチャートで首位を獲得; 昨今行われたNew Yorkでのライブを待つ行列は34丁目と9番街のブロックの半分を取り囲んだ; そのジャンルの巨人達であるSlayer、MetallicaからAnthraxに至るまでが軍門に下り、彼ら自身が女の子達とフェスのバックステージで写真撮影をしている。
「もしBABYMETALがアメリカ人だったなら、彼らは一笑に付されていたと断言できるだろう。しかし日本のエンターテイメントには偽りなく独特な何かがあり、嘲笑の的になるような考えも及ばない物を広める事をやりおおせる。」エクストリームカルチャーマガジンBizarreの音楽編集者Stephen Daultreyが語る。「それは魅惑だよ、本当に。彼女達が良いか悪いか、造り上げられた物かも気にならない程に我々は強く魅了されているんだ。」
一方、彼女達の形成が人工的である本質は隠すまでもない事である。事実、3人のメンバー達はグループに入るまでメタルに興味がなかっただけでなく、それが何かすらも知りはしなかった。「モッシュピットには入ったことがありません。」Yuimetalが認める。「ぶつかって粉々になっちゃうと思います。」
(YuimetalとMoametalは未だにメンバーである)中学生の女の子グループさくら学院のメンバーとしてプロジェクトに参加しており、日本で急速に発展する「アイドルポップ」業界のスターになる事を熱望していた。その業界とは極端に若い子達で造り上げられたグループで構成され、常に甘ったるく、無垢で、可愛く見られなければならない。その大勢がはびこる分野の中、グループの認知を得るため、タレント事務所とレコードレーベルは、オタクとして知られる偏狭なファン達によって成長する国内マーケットの一片を捉えようと、あらゆる種類の奇妙な融合を試している。オタクとは自宅に籠るポップカルチャーナードで、自由に使えるその収入をアニメ、マンガ、そしてアイドル音楽業界の燃料とする存在だ。その結果の一つがBABYMETALであり、それらは時にスリリングで実験的な物となり、時に馬鹿げた物となる。
ももいろクローバーZのもたらす過剰な感覚の襲来を見てみてほしい。彼女達の曲、労働讃歌はGo! Team*3のIanPartonの手によるものだ。; そしてでんぱ組.incの気が狂ったようなSabotage*4のカヴァーはBeasite BoysとBanana Splits*5を同居させている。
BABYMETALはアイドルというジャンルを越える存在へと進化している。: 「私たちが活動を始めた頃はアイドルフェスにしか出演していなかったんですが、今は一部ではアイドルのお客さんみたいに、一部ではロックのお客さんみたいに反応してくださる変わった混ざり方になってます。」Su-Metalは言う。「カオスですね。」
そのバンドは彼女達自身の事をカワイイメタルと称している。カワイイとは日本語で「キュート」という意味だ。東京の近く、千葉の幕張メッセで私が見た最近のライブは9,000人のファンを呼び寄せ、そのファンの殆どはオタクではなく、黒のTシャツとスウェットという由緒正しきメタルのドレスコードに背かない一般的なロックキッズ達だ。最初にBABYMETALに触れて感じる可笑しさを越えると、その音楽の質が浮かび上がってくる: 凶暴な程に音速のギターソロ、差し迫る破滅を暗示するオルガン、インダストリアルなツーバスといった物に満ち満ちている。リードシンガーのSu-Metalは小さな身体かもしれないが、ステージ上での威厳のある存在感と冷淡なボーカルスタイルは、彼女達のメタルの旋律に調和している。
プロデューサーのKobametalは彼が子供の頃から愛してきたヘヴィーサウンドと日本で今チャートを席巻するアイドルポップを融合させた。シニカルにも聞こえる。実際にシニカルである。しかしそれは細心のケアの基で作られてもいる。「女学生であるという事は、彼女達はスタジオで午後8時までしか働けないという事なんです。でも彼女達は手を抜いては帰れないという事をわかっています。」Kobametalがそう注釈した。
日本語がわからなければ歌詞の面では楽しみを逃している事になる。ギミチョコ!!には英語での合唱パートもあるが、しかし幾つかのBABYMETALの日本語詞には愛嬌のある皮肉がある。おねだり大作戦の歌詞は、父親の財布のヒモを緩めさせる為、肩もみとお世辞のコンボといった十代向けの実践的なアドバイスを提案するものだが、財布が厚くロリータフェチのオタク男性というコアなファンベースを、アイドルグループがいかにくすぐるかを示しているとも読み取れるものだ。十代のグループなのだからラブソングもあるが、その歌詞はただのラブソングより少し深く抉るものだ。メギツネは女性の惑わす力が男性を巧みに操る事を歌い、イジメ、ダメ、ゼッタイはリスナーに対して誰かがいじめられている時に見過ごさないよう訴える。
「私の友達は学校にいる時と(BABYMETALに居る時が)別人みたいだって言うんです。」Yuimetalが笑い、Moametalが続ける: 「私の友達はLady Gagaと私たちが共演した事をかなり羨ましがってたんですけど、みんな本当に応援してくれてるんです。一緒にカラオケ行くとBABYMETALの曲を歌ってくれます。」
学生生活とツアースケジュールの両立という制約を理由の一つに挙げ、Kobametalは海外での成功を追うつもりはないと言う。幾つかの曲を英語でレコーディングするかもしれないが、もしつまらなく聴こえれば得意な物に専念し、それがどこに導くかに任せると語った。
「何もローカライズする事なく世界中のファンへと届く事ができましたし、BABYMETALは他のメタルバンドと同じように聴こえないという事を人々は好んでくれているのです。」彼は言う。「だから自分たちはそのままであるべきなのかなと思うにようになってきています。」
ソース: http://www.theguardian.com/music/2014/nov/07/-sp-babymetal-interview-japanese-metal-pop
【訳者注釈】
*1 Daphne & CelesteからKelly Osbourne:
Kelly Osbourneはシンガーソングライターとして活動するOzzy Osbourneの娘。
Dephen & Celesteはアメリカのポップデュオ。2000年のレディングフェスティバルで大量のボトルを投げつけられた。
*2 ビルとテッド:
ロックスターを夢見る高校生がタイムスリップ先で冒険するSFコメディ映画シリーズ
*3 Go! Team:
イギリスのロックバンド。
TV番組「マツコと有吉の怒り心党」で使われているこの曲が日本では有名。
*4 Sabotage:
BEASTIE BOYSのヒットシングル。
でんぱ組.incがヒャダインの編曲でカヴァーしている。
*5 Banana Splits:
動物がメンバーの架空のロックバンドが出演するアメリカの子供番組。
楽しい翻訳でした
返信削除管理人さんGJ!です
長訳おつかれさまでした!
返信削除読みごたえありました
CD海外で売り出すことはないんですかね。
返信削除もったいない気がしますが色々契約が大変なんでしょうかね
楽しく読ませてもらいました
返信削除管理人さん、ありがとうございます
サボタージュおもしろかったw
返信削除でんぱ組聴いてみるかな
ゆいの鍛え上げられた肉体なら粉々になることはないな
返信削除そもそも屈強なメイトが我先に身体を張って守るだろう
管理人様
返信削除翻訳ありがとうございます。
最後の「だから自分たちはそのままであるべきなのかなと思うにようになってきています。」この一文で、海外メジャーと契約しなかったという話がつながるように思います。
もしかしたら海外メジャーデビューせずにやっていくのかも。
それならそれで面白いですね。
管理人さんいつも面白い記事の翻訳をありがとうございます。
返信削除個人的にはこのまま日本語で通してほしいな。
母国語以外で歌うと音だけになってしまって伝えたいことが伝わらないと思うんですよね。
外国人が歌詞の意味が分からないまま日本語で歌っても言葉の発音だけでこちらには何も伝わらないのと同じですね。
すうちゃんは歌の上手い下手を超越した何かを持っていると思うので尚更です。
この記事を読んだ現地人の反応を知りたいね
返信削除いつも楽しく読んでます。メタルの文脈が解るからこその翻訳。丁寧な注釈。特にbabymetalの今を追うだけじゃなく、系譜学のようにメタルの世界の入口にもなる注釈が好きです。こういうサイトがあることが嬉しい。
返信削除日本人が思っている以上に、日本の独特のカルチャー、音楽に対するアティテュード、奇妙さと生真面目さの融合、垣根の無さ、等は強く外国人に印象付けられているみたいなんだよね。
返信削除もちろん全てが好意的に受け止められている訳ではないにしろ、「なにしろ日本のやることだから、仕方ない!」的な認められ方をしているのは間違いない。
ひょっとすると、BABYMETALはそういう意味で凄く「日本的」で、外国人にとって「日本文化を体現するもの」としてしっくり来る存在なんじゃないだろうか。
可愛くて小さくて、中身は本格的で高性能で、良心的に丁寧に造られていて、奇妙だけど魅了するものを持っている。
ベビメタ批判でよく「造られた(manufactured)」という言葉が使われるけど、まさにメイドインジャパンの工芸品のような存在でもあるんじゃないだろうかって気がする。
完全同意です。
削除なるほど!
削除日本文化を体現するもの、というのはまさにその通りですね!w
そう考えるとベビメタがなぜ海外で評価されるのか
より分かる感じがします。
ボトルが投げ込まれる様子を初めて見ました。ショッキングでした。
返信削除動画の翻訳は出来ますでしょうか?
返信削除http://www.youtube.com/watch?v=k751DX-AVXg
可能であればお願いします。
君は年いくつだい?20分もある動画を聞き取り、書き出し、翻訳する。この手間と労力を想像できないお子様かな?試しに日本語のニュース20分を文字起こししてみるといい。自分が何一つそれを為すための姿勢を見せずにクレクレするのは、それ自体人を不愉快にさせるんだ。普通に考えてみるといい。見ず知らずの赤の他人にお願い出来る事なのかどうか。
削除そこまで高圧的な態度取らなくてもいいんじゃないか
削除無知だが悪意があるわけではない赤の他人に高圧的な態度をとるのはまともな大人のすることじゃないな
管理人がおもしろい伝えたいって思ったとこだけ抜粋して翻訳してくれる可能性もあるわけだしな
ほんとに翻訳してくれたんだから、なんかすごいよここの管理人さん
削除http://babymetaljp.blogspot.jp/2014/11/tainted-realitytrnycbabymetal.html
コメント13
返信削除最近もシェールロイドという若いイギリス人歌手(イギリスオーディション番組からでた女の子)もおしっこボトル投げられてます。
男女、若い子関係ないところが凄いですよね
いろんな所の反応を見てもちろん勝算あったんだろうけど、ソニスフィアはけっこうな賭けだったね(^_^;)
返信削除あそこで賞賛を得たことで戦局が一気に好転したものなぁ
この記事を書いた人は結構日本について詳しいですね。
返信削除内容も的を得たこと言ってるし。
ペットボトルについてはこういう風習はやめたほうがいい。
サッカーのフーリガンを見てるみたいだ。
歌手よりもこの行為こそが音楽への冒涜だと思う。
フーリガンもメタルも本場がイギリスな訳で・・・
返信削除書いた人は日本に住んでる記者だろうね、じゃないとここまでわからないし
返信削除日本のサブカルチャーをネットで発信しまくった結果 「日本のやる事だから仕方ない」的な空気になってね?www
ソニスですら、楽しそうにパフォーマンス始める3人!
返信削除スゴい、年齢関係ありませんね、まさしくスターdeath