2019年10月18日金曜日

【THE MIDLAND ROCK】METAL GALAXYアルバム・レビュー



古くからの保守的メタルヘッドとして、Kawaii Metalムーブメント全体に対して、多少居心地の悪さを感じていた事を認めなければならない。日本のアイドルシーンで、完全に人工的に作り上げられたという事からして、BabymetalはMilli Vanilliのようなものに見える。

Milli Vanilli:端正なルックスで人気を博し、グラミー新人賞を受賞。しかし実際に音源で歌っていたのは全く別人のシンガー達だった事を、仕掛け人のプロデューサー自らが暴露。グラミー賞を剥奪されるに至った。

しかしながら彼女達のサード・アルバムであるMetal Galaxyでは、メタルコミュニティからゲスト集団をフィーチャーしており、MetallicaやSlayerとステージを共にしているという事は、もはや自分はマイノリティに追いやられているようだ。



最初の曲は、大鎌で刈り取るようなリフの「Future Metal」により、驚くような騒々しさでMetal Galaxyは始まる。エレクトロニクスと、生楽器にサンドイッチされた、べたべたに甘いJ-pop。その醸し出す空気感とテキスチャーは、アルバム全体に残り続ける。Black Sabbathがクラシックギターやフルートの間奏を入れる事で、破壊的サウンドの重みを増させるのと同様、ポップな要素のイントロダクションにより、Metal Galaxyでの、よりヘヴィーなセクションのハイライトを引き立たせている。日本の伝説的ギタリスト(ロックデュオB'zの)Tak Matsumotoが、続く曲「Da Da Dance」で速弾きを見せる。それはDragonForceにも近いスタイルだが、キュートなボーカルと、雷鳴のようなドラムが興味深い対比を成す。ロック的だがダンサブル。アンフェタミンをキメたAbbaを想像してみるといい。それに近いものが「Da Da Dance」だ。

Babymetalを本当に理解する為には、やや超現実的な日本のポップカルチャーを把握する必要がある。その超現実主義はダリ的な「Elevator Girl」に詰め込まれている。やや馬鹿げたものながらも、アルバムに新たな様相を加える。Metal Galaxyはコンセプトアルバムとして作られたものかもしれない。歌詞の面ではさほどでもないが、ある種の感覚が楽曲を一体としている。まるで小宇宙の中にある広大な色の大群を覗き込むようで、各曲それぞれが独自の色味を放っているものの、アルバム全体として筋道が通っているのだ。4曲目、中東ギターに満ちた「Shanti Shanti Shanti」に到達する頃には、このグループの真正度に関する私の先入観は溶け始めていた。そして次の楽曲「Oh! Majinai」で、全てが蒸発する。SabatonのJoakim Brodenの手で、楽曲を海賊キャンプファイア合唱曲へと変容させており、ノルディックフォークメタルな感触があるのも当然だ。

更なるゲストとして、(テキサスのプログレッシブ・ロッカー Polyphiaから)Tim HensonとScott LePageが登場するのが「Brand New Day」。彼らの普段の作品からは相当に遠いものであり、彼らのようなアーティストが他のジャンルを探索する上で、間違いなくBabymetalは素晴らしいアウトプット先だ。そしてGrave Diggerの古典メタルを思い起こさせるイントロで「In The Name Of」が始まる。その雰囲気は、Dioのようなアーティストを彷彿とさせるもので、ほぼ映画的であり、心の中にイメージを喚起させる為に創り上げられた音楽だ。続くのはアルバム初のシングル曲「Distortion」で、Arch EnemyのAlissa White-Gluzによるメロディックデスメタルボーカルがフィーチャーされ、Su-metalとMoametalの可愛い言葉と優れたコントラストとなる。「Pa Pa Ya!!」ではタイ人ラッパーF.Heroが登場し、彼の貢献が曲にパンチの効かせ、アルバムでも最もヘヴィーな曲の1つにしている。

宇宙をテーマにした「Starlight」へと続き、光と影をもたらし、そのテーマは「Shine」にも引き継がれる。引いては寄せる優美なボーカルによる詠唱と、アコースティックなミドルセクション。そこから切れ目なく最後の曲「Arkadia」へと流れる。ブラストビートを刻むドラムの上で、可能な限りの音和を詰め込んだギターが鳴らされ、アルバムの終わりを激的な階調で確かに締めくくる。

バンドの成熟(Su-metal(Suzuka Nakamoto)とMoametal(Moa Kikuchi)は、Babymetalに選ばれた時、13才にもなっておらず、ロックに一切興味がなかった)を証明しており、「Gimme Chocolate!!」のようなギミック的曲はなくなり、より正真正銘のメタルで取って代わられている。ロック君主たるRob Halfordがパフォーマンスを通じて、この女の子達を転換させたようだ。それに異議なし!

ソース:http://www.themidlandsrocks.com/babymetal-metal-galaxy/

3 件のコメント:

  1. いつも翻訳ありがとうございます。
    これはしっかりと楽曲を聴いていることがわかりますし、さらにコンセプトアルバムである事まで理解。良いレビューでした。

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  2. 落ち着いた素晴らしいレビューですね。
    国内盤の2曲を抜いて聴くとより纏まってコンセプトアルバムっぽくなるかな?

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  3. 「アンフェタミンをキメたAbba」www

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