2019年10月2日水曜日

【Mixdown Magazine】"BABYMETALの銀河" 特集インタビュー記事


オーストラリアの雑誌「Mixdown」によるBABYMETALインタビュー。テキストの質が非常に高いです。

BABYMETALの銀河

我々とサードアルバムを目前とした奇妙なKawaii Metalバンドの会話

Will Brewster著

何らかの意味において、バンドとは常に「ブランド」と考えられてきている。60年代にビートルマニアの急成長を、買いと判断した頭の切れる商売人の登場以降、音楽とマーチャンダイズは本質的に結びつき、結果としてThe RamonesがパンクグループなのかTシャツのロゴなのかが分からない層も産んでいる。

しかしながらBABYMETALは新次元へと事を進めた。芸能事務所アミューズが2010年に結成した得体の知れないアイドルグループ。ボーカリストのSu-MetalとMoametalがフロントを務めるそのグループは、非常にパラドックスを孕んでおり、業界内の年季の入ったベテランでさえ、そのグループをどう捉えればいいのか判断できずにいるほどだ。日本のKawaii現象、または「キュートカルチャー」から大いに引用し、そのダンスと揃いの衣装が、骨を砕くようなリフと轟くブラストビートとコントラストを成し、真にユニークで熱を持つ音楽的体験を創り上げている。海外チャートで最も成功した日本人バンドの1つという歴史を打ち立て、本質的には芸能事務所に作り上げられたOne DirectionやBackstreet Boysのようなアイドルグループでありながらも、メタルコミュニティから広く受け入れられてもいる。そのバンドは完全に組み立てられたものであり、受けを狙ったもので、馬鹿げたものでもありながら、同時に革新的だ。革新というのは、彼女達はメタルの名の元に、ジェンダーや人種のスタンダードを転換させているのだ。全てが単純に困惑させるものだが — ヤバいほどに最高なわけだ。
2014年のセルフタイトルデビュー盤、そして2016年の「Metal Resistance」という2枚のアルバムをリリース後、Lady Gaga、Metallica、そしてRed Hot Chili Peppersと海外をツアーしたBABYMETALは、彼女達のストーリーの3番目のチャプター「Metal Galaxy」のリリースという星を見据えている。そのバンドは明らかにジャンルを混ぜ合わせる経験を十分に積んでいるが、Metal Galaxyにおいては、Drum 'n Bass、ポップス、ジャズ、そしてHip Hopを弄んでおり、多くの場合それが1曲の中で行われているのだ。

「このアルバムでは多様な音楽が星として表現されています。それぞれの曲が星となった世界をMetal Galaxyと呼んでいます。BabymetalがMetal Galaxyを宇宙船のように飛ぶのです。」
バンドがそのように隠喩的に述べる。「私たちは相当に長い間、世界中をツアーしてきました。それらの旅を通し、様々なタイプの音楽、楽器、そして文化を楽しんできました。このアルバムはそういった経験から得たあらゆるインプットが注がれているのです。」

そのアルバムのインターステラ・テーマに従い、膨張する「Metal Galaxy」はSunとMoonと呼ばれるサイドからなる2枚組アルバムとしてリリースされる。

「太陽と月は光と闇の二面性というアルバムコンセプトを表すものです。」BABYMETALが解説する。「ニューアルバムに収録された各曲は音響面で異なるアプローチがなされていますが、これもBABYMETALを完成させる上で必要なものでした。」

「Metal Galaxy」からの最新シングル「PA PA YA!!!」は時間と時を超える過去に類を見ないBABYMETALの旅のメリットを激賞するものだ。ロシア民謡を思い起こさせるような、妙に伝染力の高いアップビートのリズムを含んだ曲が奮起を促し、シンセで彩られたパワーメタルなサビからタイのラッパーF.Heroがフィーチャリングされたヴァースへと続く。BABYMETALにとって「PA PA YA!!!」は彼女達が目指す物を奥底で象徴している。目指す先とは、西洋の耳に対し、東洋の声も重要なのだという事を思い起こさせるという事だ。

「『PA PA YA!!!』には夏のお祭りというコンセプトも含まれています。」集団意識たるBABYMETALが説明する。「アルバムはメタルの銀河を旅するものですから、この曲ではアジアへと旅してみたのです。」

「F.Heroはタイで最も有名なラッパーの1人で、彼がトロピカルな熱波を曲に加えてくれました。6月には横浜アリーナで私たちと共演しています。ファンはこの曲で踊るのを楽しんでくれていたようです!」

F. Heroの際立ったヴァースに加えて、Metal Galaxyではスウェーデン最良のメタルボーカリスト — SabatonのJoakim Brodenを「Oh! Majinai」、そしてブルータルな「Distortion」にはArch EnemyのAlissa White-Gluzをフィーチャリングゲストとして迎えている。

「以前にも私たちはSabatonとはフェスで何度か会っていますし、2018年のジャパンツアーにスペシャルゲストとして参加もしてくれました。」BABYMETALが両曲の成り立ちについて語る。「Joakimは実際に日本語で『Oh! Majinai』を歌ったんです。彼は完璧さを求めて、練習と相当な努力を重ねてくれたんです。彼の大変な努力に感謝していますし、彼のボーカルを加えた事で曲がとてもパワフルになった事を大変嬉しく思っています。この曲はSu-Metalお気に入りの曲です。」

「『Distortion』は心の中の葛藤、外面と内面についての曲ですので、Su-Metalに対する異なるパーソナリティを歌い上げられる女性ボーカリストを探していました。」Arch Enemyのフロントウーマンとのコラボレーションについてバンドが語る。「それに、女性のデスボイスが曲にハマるとも考えたので、彼女は完璧でした。それぞれの曲にあれほどにパワフルなピースを見つける事ができて満足しています!」

BABYMETALのMetal Galaxyに対する圧倒的な希望感、そして延々と続く神秘主義のオーラはさておき、BABYMETALと話をする上でタブーにも触れざるを得ない。従来、SU-MetalとMoametalにはスタジオとステージを共にする3番目のメンバー、Yuimetalがいたのだ。彼女は継続的な健康上の問題により、12ヶ月前にバンドを離脱せざるをえなかった。BABYMETALが3番目のアルバムで2人組となった事は、やや皮肉な出来事だが、バンドは — もちろん曖昧に — Yuimetalを失った事がBABYMETALのアウトプットを損なう事にはなっていないと断言する。

「BABYMETALは常に進化するものです。ですから私たちはどのアルバムでも何か新しいものをもたらしています。」Babymetal宇宙船のコクピットからSu-metalとMoametalが答える。「『Metal Galaxy』が『Babymetal』『Metal Resistance』と大きく異なる点として、ニューアルバムはSu-MetalとMoametalという構成を前提に楽曲が作られているという事があります。それが最大の変化です。」

その変化こそが、Metal Galaxy全体に浮かぶ二面性という尊大なテーマの原因なのかもしれない。今、Babymetalは二進法に誘われている事を自覚している。様々な対の衝突に捕らわれている。フェミニンとマスキュリン。グローバルとローカル。東洋と西洋。真正と加工。もしかすると、何よりも、メタルとメタル以外に。

「Babymetalとは新たなメタルの誕生という意味です。」バンドが断言する。「既存のフォーマットではなかったようなサウンド同士を合わせるグループなのです。」

「このプロジェクトに二面性があります。BabyとMetalは全く異なる物ですが、どちらも互いがなくては存在し得ないのです。」

ソース:http://www.mixdownmag.com.au/babymetals-galaxy

Ma-Metalさん情報提供ありがとうございました

3 件のコメント:

  1. 来年はまたオーストラリアに行ってほしいですね。

    返信削除
  2. とてもアツいインタビューで泣けてきました やっぱり海外メディアのほうが 良く分析されてますよね

    返信削除
  3. いつも長文翻訳ご苦労さまです。
    もはや海外メディアはメンバーインタビューをスーメタとも最愛メタとも捉えておらず、ベビメタ集合意識のステートメンツと捉えるように(笑)
    長い人生で培われた音楽的教養とサード・ワールドにまで至る文化的背景まで視野に入れたニューアルバムのエンサイクロペディア的な楽曲構成を、地でふたりが語るのはもはや不可能ですものね。
    もちろんヒットしなければ絵に書いた餅にすぎませんが、やろうとしてるのはビートルズのアフターバースなのかヘルタースケルターの理論化なのか……。

    返信削除