2019年10月7日月曜日

【METAL HAMMER】METAL GALAXYアルバムレビュー


BABYMETAL Metal Galaxy

日本のFox Godの使者が新たな音の航路を記す

Dannii Leivers著

 Babymetalが国際的にも表面化した2014年。我々の興味をひきつけてはいたが、そんな恥知らずの一発屋が、あり得ないようなサクセスストーリーをメタル界で辿るとは誰も考え得なかった事だ。
Fox Godにまつわる馬鹿げたバックストーリー。ブルータルなメタルとJ-popが融合した音楽をシンクロしたダンスでパフォーマンスする。クレイジーだ。メタル純粋主義者達が泣きわめくような代物だ。実際に彼らは出来うる限りの力で泣き叫んでもいた。その5年後、Babymetalは踏み止まっており、何百万というメタルヘッズ達の心とデビルホーンを勝ち得てきている。
 今、我々にはアルバム・ナンバー3が届けられている。「Metal Galaxy」には、いつも通りに不条理な物語の新編が、ファンに解読される為に用意されている。7つのメタル霊魂についての伝説、そしてカテゴリ4の台風「MOON」にまつわる物語。これはBabymetalにとって、Yuimetal不在の体制による初のアルバムだ。彼女は2018年10月に脱退し、シンガーのSu-metalとMoametalは、デュオとしてバンドのフロントを務める事になった。非常に愛されたバンド仲間の離脱をファンは嘆き悲しんだが、それでもBabymetalのサウンドは揺るがなかった。それどころか「Metal Galaxy」に浮かび上がるのは、Babymetalのサウンドを新たな方向へと推し進めようとする試みだ。
 ファーストシングルの「Distortion」は、元々2018年5月にリリースされていたが、Yuiを含まないバージョンが再録されており、Arch EnemyのAlissa White-Gluzがゲスト参加した。この曲には2016年Metal Resistanceにあったパワーメタルの全力疾走感が残っている。ああ。そこにはKaiju[訳注:日本の特撮モンスター(怪獣)を指す英語化した日本語]を打ちのめす「KARATE」のリフに匹敵するようなものはないが、このバンド馴染みのブルータルさは「PA PA YA!!」で現れてくる。Linkin Park風味のあるリフだ。「Arkadia」には全速力のスピードメタルのうねりがあり、ハイライトとなる「DA DA DANCE」は、あたかも女の子たちがDragonforceを新宿のアーケード街へと引きずり込んだかのようなサウンドだ。その曲ではSu-metalの非常に力強くなったボーカルがミックス内で前面に出ており、バンドのデビュー以来うなぎのぼりに進化してきた彼女の力を見せるだけでなく、Babymetalによる滑稽なサウンドの中にある異質な要素群の拮抗も示しており、彼女達の過去作以上にそれが最も顕著な曲かもしれない。
 今のところは"ノーマル"だが、それ以外の箇所でバンドはサプライズをグレネードのように投げ続けてくる。イントロの「Future Metal」では「Fasten your neckbrace(首のコルセットをお締めください)」と指示される中、クランチーなパワーコードと軽快かつ多彩なビートが響く。「Elevator Girl」は砂糖漬けにされたドゥーワップなコーラスが英語で歌われている。シタールと脈打つビートの周囲を旋回する「Shanti Shanti Shanti」は、Eurovisionでもぶちかませる出来だ。「Oh! MAJINAI」ではSabatonのJoakin Brodenが出現し、非常にバカらしい、Korpiklaaniのようなフォークメタルを聴かせる。「Brand New Days」では平均的なJudas Priestファンの好み以上に、BabymetalのルーツであるJ-popへと極めて接近している。そして、Bring Me The Horizonの「Medicine」のようなその曲に、テクニカルメタラーであるPolyphiaを迎え入れる事で常識を破壊している。
 もし「Metal Galaxy」がBabymetalによる最もポップス度の高いアルバムかのように聞こえたとしたら、その感覚は正しい。彼女達の支離滅裂イズムに初期からハマっていた者なら、なんであろうと本アルバムにも惚れ込むだろう。その存在自体が強大な変化球であるバンドが、このアルバムで見せている数々の脱線は、バンドが我々の想像した事のない発展能力を備えている事を示している。そして、その発展がヘイターの考えを覆させる事は絶対に有り得ない。そういった者を覆すという事について、Babymetalは一切の関心を示してさえいないのだ。その真贋性を何よりも優先する事もあるジャンルにおいて、Babymetalのような存在は他には皆無である。その我々の世界はBabymetalのおかげで、より良き世界になっているのだ。

★★★★★★★★☆☆

Dragonforce、Sabaton、Powerwolfファン向き

7 件のコメント:

  1. 10/8点だと控えめな点数に感じるけど星8見ると高評価に見える不思議

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  2. Yuiを含まないバージョンが再録されておりと書いてあるが、これはメタルハマー側の解釈なのかそれとも本当に再録前はYUIMETALの声が収録されてたのか気になる。

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  3. 凄く良いレビューですね。ベビメタの事を深く理解した人が書いたんでしょうね。アルバムはまだ聞いていませんがメタルの本流に寄せていくのではなくSUMETALが常々言っているようにBABYMETALというジャンルを作る方向へ舵を切ったような印象を受けました。

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  4. さすがはMetal Hammerのレビューといったところでしょうか。
    8/10というのがどういう意味なのかは、明日自分の耳で確かめたいと思います。
    翻訳に感謝!

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  5. 渋谷の最速で購入しいまの時間まで聞き込んでいた者です。
    いや、ものすごいアルバムですね。これレビューで満点つける人そう簡単にいないと思います。
    そしてそれできっと正解です。そう作られてますから。
    緻密に計算された超スピードの変化球まみれで、
    ある意味レビュアーが試されるアルバムではないでしょうか。
    ちなみに自分は大好きです。もう笑いっぱなしでした。
    海外の方々の感想とても気になりますね。

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  6. 8点は満点から二点マイナスって捉えない方がいいと思いますよ
    これは素晴らしいアルバムって評価でしょう
    革命的とか、伝説的って訳ではないってだけでしょう

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  7. >そして、その発展がヘイターの考えを覆させる事は絶対に有り得ない。そういった者を覆すという事について、Babymetalは一切の関心を示してさえいないのだ。

    うんうん、承認なんか求めずに独りツーンっと屹立してる感じね笑

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