2019年11月15日金曜日

【FAKKER】特集記事「#STAYMETAL」



チェコスロバキアの雑誌「FAKKER!」がBABYMETALを表紙に据えた特集記事の翻訳です。
「PMC」インタビューの引用は、どういったニュアンスで海外に伝わっているのかを明らかにする意味で、あえてPMC本文を引用せず日本語訳しています。日本語→チェコ語→英語→日本語と翻訳される中で内容が変化していますので、正確な発言についてはPMC原書をご参照ください。

BABYMETAL #STAYMETAL


BABYMETALは部屋の隅で座ってはいない

BABYMETALは空を飛び続ける!Su-metal、Moametal、そしてYuimetalは、当初の国際的爆発の後、決して色褪せたmemeとしてインターネットのアーカイブの中に消えていったりなどしない。むしろ彼女たちはリリースをし続けており — 現在はサードの「Metal Galaxy」 —、ツアーを続け、次から次へとファンを獲得し、星のように煌めく未来へと向かっている。文字通り、星のように煌めくのだ。なぜなら「Metal Galaxy」のテーマとは、Su-MetalとMoametalが様々なメタル銀河を旅するものなのだから。

あらゆるストーリーがそうであるように、そこに問題が何も生じなかったわけではない。しかし、BABYMETALはそれらに打ち勝ってきたのだ。なぜなら、今はデュオとなったSuzuka NakamotoとMoa Kikuchiは、ずっと小さな子どものままでいられはしないのだから。20代となった今、彼女たちには何年にも渡る素晴らしい音楽的経験を積んできていて、それが彼女たちに意味する事を考える時に差し掛かっているのだ。これ以上、読者を身震いさせておくのはナシだ。Fox GodとRob Halfordに清められたのだから、そこには絶対的勝利しかないのだ。

一歩下がって・・・

前回Fakker(2016年秋号)でフィーチャーした記事から始めよう。BABYMETALは芸能事務所Amuseによる通常のJ-popグループとして、日本のアイドルプロジェクトさくら学院の裏で始まった。Idol(または日本語でのAidoru)とは、芸能事務所が個々の魅力、イメージ、パーソナリティで選んだパフォーマーだ。「パフォーマー」という単語は、非常に適切なものだ — アイドルはポップシンガーとしての活動だけでなく、映画で演技をしたり、バラエティ番組で観客を魅了したり、モデルとしてのキャリアを進む事もある。アミューズは、そのアイドルグループを10歳から15歳までの女の子達が通う女学校というフォーマットにした。各学年の終わりには、さくら学院は新譜を発売し、現メンバーは進級し、15歳のアイドル学生が所属するシニアクラスは卒業し、その「学校」には新入生が1年生として入学してくる。学生は、それぞれの様々な興味にあわせて科学、料理、芸術、音楽などの「クラブ」を結成する。そのクラブがアイドル・サブグループをさくら学院内で形成するのだ。BABYMETALは、ヘヴィーメタルに専念する「クラブ」の1つとして結成された。インターネットとYouTubeの時代、BABYMETALが日本の外へと飛び出し、ヨーロッパとアメリカのメタルシーンと出会うのは時間の問題だった。

日本、そして全世界のヘヴィーメタルコミュニティにおいて、当初、BABYMETALは非常に分極した反応を引き起こした。それは完全なる興奮、もしくは全くの嫌悪感のどちらかだった。多くの人々は — それが通常のヘヴィーメタルファンだったか、メタルミュージシャンであったかに依らず —、自然とBABYMETALについての考えを表明していた。後になって考えてみれば、それは巨大すぎるカルチャーショックの所為であったとも言える。結局のところ、メタルとは柔軟かつ実験的ジャンルであり、同時に極めて保守的なジャンルでもある。Metallicaの「St. Anger」のアルバムを、ヘヴィーメタラー達に見せてみるといい。そうすれば、その意味がわかるだろう。

BABYMETALの初期、彼女たちと恨みのこもったメタル群落との衝突については、横に置いておく。 — その事は、初めてBABYMETALの名が大きく知れ渡ったイジメへのプロテスト・ソング「Ijime, Dame, Zettai」の20周年を記念した2031年のFakkerによる記事に取っておこう。今は、話をショートカットしようじゃないか。BABYMETALの正当性を訴えたかった者は、既にそうしてきているはずだ。10月前半に発売されたサード・アルバム「Metal Galaxy」に至った今、我々の多くは日本のアイドルとメタルのミックスについて、既に意見をはっきりとさせているはずだし、我々は新譜は心待ちにしていたか、十字を切っていたかのどちらかだ。著名メタルミュージシャンにとっても同様だ。BABYMETALに気持ちが傾倒している者は、新譜に加わっており、残りは干渉せずにいるのだ。

… サイドステップ …

そのバンドによる国際的シーンへのエントリーが、途方もなく感情的な反応を引き起こした後、BABYMETALと、10代のシンガー達3名は、現在の音楽業界のあらゆる悪のシンボルとなった。それは確かな進歩である。BABYMETALのキャリアを、よちよち歩きの頃から記録してきた日本の雑誌ヘドバンの編集長であるNaoyuki Umezawaによると、反対派を黙らせてきたのは、そのライブの力だという。その意見を掲げるのは彼だけではない。今年の夏、Summer SonicフェスティバルでBABYMETALと共演したBring Me the HorizonのフロントマンOli Sykesが、冗談交じりに宣言したのは、Bring Me the Horizonは、この後のBABYMETALのコンサートの為に、観客を暖めるために演奏しているだけだ、という事だった。それこそ私がメタルと呼ぶものだ。そうだ。Oliは間違っていない。称賛されたBABYMETALのライブショーとは、そのバンドのメンバーにとって、本当に極めて大変な努力を要するものなのだ(血と汗と涙)。しかし、その事については後に語ろう。

BABYMETALへの憎悪の減少は、Rob Zombieが彼のファンを叱りつけた後、皆が恥を感じた事にもよるとも考えられる。彼が「ツアーを回っているナイスなキッズ達」と呼ぶBABYMETALを、あらゆるメタルに対する冒涜と感じるならば「気難しいクソ老害」だと述べたのだ。公に知られた子供や十代の意見や活動に対して、声高に異議を唱えたくなった時には、この彼の格言を思い出すべきだ。人気あるアーティストの口撃で脅かされる事はないだろうが、10代のパフォーマンスに恐れを抱き、気難しいクソ老害になりたい奴なんているか?この修辞的疑問はSu-metal、Moametal、Yuimetalだけに関するものではない。ああ。建設的批判には問題はない。我々の筋の通らない怒りは、蒸しブロッコリに直接向けられるべきなんだ。現代社会の真の敵である蒸しブロッコリに。

そして、数年前のBABYMETAL現象に恐れをなさず、「Gimme Chocolate!!」のようなビデオにポジティブに興奮していた我々は?その我々の興味とは、純粋な好奇心によって引き起こされたものだったかもしれない。猫が堂々とルンバに乗るビデオや、そういったような奇妙なバイラルビデオを、誰でも見た事があるだろう?だが、BABYMETALには、我々を視聴させ、耳を傾けさせた、何か違うものが間違いなくあった。それとは、素晴らしいライブバンドだ、という事なのだ。もしかすると、自己肯定の為に必要としたものかもしれない。真のヘヴィーメタラーは、多少のJ-popなんかで気を落とさせられなんかはしない、という自己肯定。聖母マリア像とチョコレートについての歌詞の対比に表れた、素晴らしい象徴的バトルという自己肯定。だが、主には・・・

… 更に更に前へと飛び跳ねる!

… Su-metal、Moametal、そしてYuimetal!YuiとMoaの快活なエネルギーがステージ中を走り回り、クールなSuzukaとコントラストを成す。言い換えれば、彼女のカリスマ的ストイシズムが、2人の興奮とコントラストを成す — BABYMETALのジャンルミックスによるコントラストに近い —。それが、BABYMETALの成功の鍵なのだ。さいたまスーパーアリーナでの「Road of Resistance」のコンサートビデオを見てみるといい。そのトリオ、そしてSu-metalのちょっとしたジェスチャーにまで反応する観客から、目が離せなくなるに違いない。もちろん、KAMI-BANDのミュージシャンたちの力、そしてBABYMETALプロデューサーKobametalの、狂ったジャンルの組み合わせを成立させる洗練されたセンスなくしては、バンドは生き残れはしなかったし、そもそも生まれてさえいなかった。だが、彼らはステージの際に立ち、何千ものファンと対面しているわけではない。そこは常に、Su-metalと、彼女の2人の仲間達の場所だったのだ。コンサート、そしてまた続くコンサート。そ3人の若い女性は、レースとチュールのマスケット銃士の衣装に身を包み、長髪で髭を蓄え黒いTシャツを着た大群と、ぶつかりつづけてきた。そして、彼女たちは成功したのだ。

もし誰も来なかったら?

しかし唐突にYuiが離れ、ステージで注目の的となるのは2人の女の子達だけになる。これまでも、これからもメインボーカリストはSu-metalではあるが、SuzukaとMoaは恐れを抱きはじめていた。トライアングルの3つ目のエネルギッシュな頂点を担うYuimetalなしでは、ファンはBABYMETALを受け入れてくれないのではないかと。両人の発言を見ると、Yuimetalを欠いた初期の幾つかのショーでは、暗い考えが満ちていたようだ。「アメリカツアー中、私たちは感じたのは、Yuimetalがいない事で、ファンの皆さんががっかりしたり、怒っていると感じていました。ファンの皆さんの為に、頑張ろうとしてみていたのですが、最初の頃は2人だけでは前に進むことができずにいて。私たちのパフォーマンスも最高ではなかったと認めざるを得ないです。」悲しげにSu-metalが認める。「私たちのヘッドラインショーで初めて怖いと感じました。フェスはまた別として — 私たちの事を知らなかったり、聴いたこともなかったりする方が多いので、全力で行くんですね。何も失うものはないですし、結果として逆にBABYMETALの音楽は良いねって納得させられますから。でも私たちのヘッドラインショーでは、皆さん私たちの事を知っているわけですから、あらゆる点でもっと厳しかったです。幾つかのショーでは、何をどうすればいいのかわからなくなってしまって。でも最終的にはポジティブな反応が、だんだんと返ってくるようになったので、心配する事をやめました。」

ステージ上で女の子達は、過去類を見ないほどにライブに全力を傾け、どのパフォーマンス後も汗でびしょ濡れになり疲れ果てていたが、Yuimetal脱退により引き起こされたファンの敵意は、日本でも続いていた。「私たちの日本のファンの皆さんは、海外のファンの皆さん以上に気に病んでいたかもしれません。デュオとしての私たちを受け入れてはくれない、という感じが本当にしていたんです。冗談で誤魔化そうとして、Moametalに大袈裟な感じで、ホームで誰も見に来てくれなかったらどうしよっか、って言ってたんです。でも、本心で心配していたんです。恐れに打ち勝たなきゃならなかったんです。」そのようにSu-metalが打ち明けた。

Fox Godによる「ノーコメント」

ファンの憤慨は理解の及ぶものであり、それに加えて、Yui脱退にまつわる奇妙な状況が拍車をかけていた。2018年に何の説明もなくYuimetalはステージへ登場しなくなり、BABYMETALは春と夏、アメリカとヨーロッパを彼女なしでツアーしたのだ。バンドは公式な声明を、後に発表したにすぎない。彼女の脱退の裏にバンドとの対立はなく、詳細不明の健康上の理由というだけの発表だった。それが広報上の大いなる過失であったかもしれないが、BABYMETALは、基本的にインタビュー対応をあまりしないという点で、多少の正当化が可能だ。なぜなのだろうか?「BABYMETALはあまりインタビューをしません。特にコンサートについて、どうだったかといったような事も語りたくないんですね。例えば、私の歌が良くなかったとして、技術的な問題のせいだったとしても、ただの口先だけの言い訳みたいに聞こえてしまうかもしれないですよね。どんな状況でも、言い訳する事なく全力を尽くしたいんです。」日本の雑誌PMCでの最近のインタビューにて、Su-metalが語った内容だ。同じインタビューにおいて、インタビュワーは3年ぶりのインタビューである事、そして最後のインタビューが2018年1月に日本のYahoo!ニュースに掲載されている事を、Suzukaに思い出させていた。メタル界の巨大なフィギュア達とパフォーマンスを共にし、音楽の世界に旋風を起こす現象としてメディアに喧伝されているバンドのシンガーである事を鑑みれば、Su-metalは、まるで隠匿者のようでもある。

しかしながら彼女たちはメディアに対する心構えを変え、この数ヶ月においてメディアやファンの質問にも、多少答え始めた。「Yuimetalが離れてしまってから、私たちはもっと自分たちを伝えなきゃいけないんだなって思ったんです。もちろんファンの皆さんも気になっているし、不安でしょうし。怒ってる方もいるでしょうし、それももっともだと思うんです。この状況全体を明らかにしておきたかったんです。」PMCでSu-metalが、加えて説明する。良いニュースとして、この決断は危機下でのコミュニケーションだけに限らないという事がある。おそらく皆が疑問に思っているのは、見出しにもある、BABYMETAL神話を代表する存在であるFox Godの本件への関わりだ。全ては彼の手によるものかもしれないし、何も彼は関わっていないのかもしれない。BABYMETALをインタビューする機会に恵まれたジャーナリストは全員、Kerrang!が述べていたように、どこかのタイミングで「Only the Fox God Knows」という回答を得る事になる。これはBABYMETALによる冗談めいた「ノーコメント」の言い方であり、BABYMETALメンバーが優しく、慎み深く、個人的過ぎる質問への回答を拒否する方法だ。バンドメンバーは彼女たちのプライバシーを厳密に守っている。そのメタル・オルター・エゴにまつわる神秘的オーラと、彼女たちの音楽全体の空気感を保っているのだ(— ファンによれば — 現実におけるSuzukaは、よく喋り、笑う女の子で、クールな女王であるSu-metalとは対照的)。公とのコミュニケーションを減らす事は、思春期の女の子達にとって安心であったとは思われるが、Yuimetal脱退のような激的変化があった際には、上手くいきはしない。

ポストYuimetal

Kobametalによれば、Yuiの脱退は残った2人のメンバー達にとって大きな挑戦であり、全員 — 思い切って、そこにKobametalも含める — で、持ちこたえきったのだ。その最中で、Su-metalとMaometalの密な関係は、より強くなり、バンドの運営にも2人はより関わるようになった。大きな決断としては、KobametalとKAMI-BANDと共に、BABYMETALをデュオとして続けていくというものがあった。その決断が2人にもたらした変化がインタビューにも表れている。Su-metalは、彼女がBABYMETALで経験した事について、多く時間を費やして考えている。その経験の量たるや莫大だ!彼女自身の言葉によると、目の前のタスクをこなす事に、非常に集中してきていた為、自分が何をやっているのかを考える時間もなかったのだという。「今まで、BABYMETALが作られて、そのストーリーの流れに自分は運ばれているような感覚があって。(...)ただ大きなステージに立っているだけで。でもそこには、私が理解できていなかったものがあったと思うんです。今はステージに立っていても、ゴールが見えています。人に影響を与えられるし、BABYMETALには大きな力があって、私はその一部なんです。3人だったからうまくいっていた事についても考えていたんですが、今の私は強くなったと思います。歌う力があるし、それを皆さんに届ける事ができます。」Moametalも新たなBABYMETALから力を得ている。「どんな形であっても、続けなきゃいけないんです。BABYMETALが止まってしまってはダメですし、負けちゃいけないんです。」彼女は、Yuimetalのいない状態での初めてのコンサートについても加えて語った。「そのツアー中に、私たちがチームや、ダンサーの皆さんに、どれだけ支えられているかって、たくさん考えました。BABYMETALは私たち2人だけじゃなくて、私たちをサポートとしてくださる全員でBABYMETALですし、皆さんに本当に感謝しています。その気持を皆さんに返すためにも、ステージに戻ったんです。」

個人、2人、3人、全員。複雑な数学だが、あらゆる冒険を成功に導く為に、極めて大切なものだ。11歳と13歳という年齢でBABYMETALを始めたSuzukaとMoa。成人期に差し掛かった彼女たちは、ファンはデュオとしても彼女たちを受け入れていて、2人だけになってもバンドの中で孤独なわけじゃない、という事を実感している。いかようであろうとも、Kobametalは彼女たちの成長に満足しているようだ。「BABYMETALにとって大変な時期でしたが、Su-metalとMoametalに続けたいという強い気持ちがあったんです。彼女たちが(バンドの)核になるんだ、と望んだのです。BABYMETALが進化を続けていく時なのです。」新たな情熱、Fox Godの御加護、そして「Metal Galaxy」という新たなアルバム。彼女たちの前には明るい未来しかない。言い換えれば、BABYMETALは私たちを置いてけぼりにはしない。抵抗は、(今も、そしてこれからも)無駄だ!

英訳ソース:https://www.reddit.com/r/BABYMETAL/comments/dufk8z/babymetal_is_on_cover_of_a_current_issue_of_a/

Ma-Metalさん情報提供ありがとうございました

1 件のコメント:

  1. 長文翻訳ありがとうございます。
    彼女達は尊い

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